保健医療分野におけるフューチャー・デザインの可能性
(日時)2019年4月6日 (場所)大阪府大阪市 大阪大学中之島センター
フューチャー・デザインに関して,私が知るところの内容整理です.
予測社会医学では2017年に高山市で開催された「飛騨地域周産期医療に関する講演会」にて講演を行っています.
http://www.medbb.net/public/futuremed/20170715/
会での報告ではフューチャー・デザインについても触れています.
(飛騨地域のおかあさんとお子さんを幸せにするには? より)
ということで,ここでは高山市の現状についても公開されているデータから調べてみました.
フューチャー・デザインとは
将来世代になりきって考えれば将来世代から奪うのをやめることができます−オピニオン#30 西條先生2016/3/14(リクルートマネジメントソリューションズ)https://www.recruit-ms.co.jp/research/2030/opinion/detail30.html
以下引用
「重要な意思決定をする際には、7世代後の人になりきって考える」
「彼らの真似をしてみようと思い、その一連のプロジェクトを「フューチャー・デザイン」と名づけ」
「私たちの提案の1つは、組織内に将来世代になりきって将来を考える「仮想将来世代」の集団を作り」
私なりに解釈する,フューチャー・デザインとは
「意思決定を現在の視点によるものだけではなく時間軸上で未来方向に拡張させた状態の中で行うための一連のプロジェクト」既に議論なされているように「フューチャー・デザイン」=「仮想将来世代」を用いた手法そのものだけではない.
ある意思決定が現時点において最適な問題解決であったとしても,そのことにより将来に多大な影響をもたらしてしまう可能性を否定できない.
しかしながら現時点において抱える問題が全く解決されないと,未来が存在しない可能性もある.
一方将来予測は「ある仮定」に基づき算出することはできるものの,そのような未来が来るとは限らない.
(奈良県の医療を取り巻く状況について より)
未来と現在を繋ぐキーとして「存在」することがこの枠組みの前提となる.
ただし,自身が存在し続けていることなのか一族(子孫)の繋がりにより存在している話なのか,地区そのものが未来においても存在している話なのかいろいろ考えられるが,
社会システムの話と捉えると対象とする集団(地域)が未来においても存在することが前提条件となる.
ある対象地域における社会システムについて考えるのであれば,そのシステムが対象地域にとってどのような役割を担っているのかを整理することが重要であり,システムがそのまま「存在」することを前提としない
(地域と医療の統合に資する 情報活用の考え方 −不足の観点からみる医療2.10− より)
保健医療分野にフューチャー・デザインがもたらす可能性
医療における未来の話として,各都道府県が策定しているものに地域医療構想がある.想定している未来は2025年実際に想定する未来の設定が2035年なのか45年なのかそれ以外なのかによって話は変わってくる
2035年について厚生労働省は保健医療2035で示していた
(地域と医療の統合に資する 情報活用の考え方 −不足の観点からみる医療2.10− より)
そして今は
第1回2040年を展望した社会保障・働き方改革本部 資料(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000101520_00001.html
地域医療構想の策定にあたって住民の参加等についてはガイドラインの中で述べられている
地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会 報告書(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000080284.html
政策を進めていく上で,住民(利用者側)と将来を見据えた合意形成するにあたって,
矢巾町の水道事業の件は水道サポーターワークショップの話でフューチャー・デザインの事ではありませんので以下から修正してます. |
フューチャー・デザインを進めていくには現状の話と未来の話が複雑.
関係者一同が同じ未来を思い描いて議論できるのかが,気になる部分.
フューチャー・デザインの考え方では同じ未来を思い描く必要はなく議論が成立すれば問題ない 故に下の文でいう「一致する未来」とは議論が成立したところでの内容そのもののこと |
その地域は未来においても存在するが現在の医療状況(受療行動であったり提供体制)がそのまま存在することを前提としない議論になる.
いずれにしましても,行政が現状をどのように評価しているのかがスタートになると思います.
地域社会を知るためには
物事,仕組みを未来志向で変えていくためには,一見不連続に見えるかもしれない変化がどこかで連続性を有していることを示すことが必要と考えています.そうなると「今」を把握することが求められるわけですが,対象範囲が広くなるほど困難になっていきます.
私の場合は奈良県の保健医療を中心とし地域社会を知っていかなくてはなりませんが,全ての事柄をリアルタイムに経験し知ることは事実上困難です.
そうなると,情報を基に全体を見回しながら引っかかる部分を見つけ出しドリルダウンすることを繰り返していくことが一つの方法と考えています.
高山市では総合計画の策定や評価・検証や今後の政策立案の基礎資料として調査をされています
まちづくり市民アンケート調査等の結果(高山市)
http://www.city.takayama.lg.jp/shisei/1004958/1006854.html
ここでは
平成30年度高山市まちづくりアンケート調査―報告書―平成30年12月(高山市)
http://www.city.takayama.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/006/854/h30shimin_houkokusho.pdf
の「5 将来に向けた高山市のまちづくりへのご意見など」のテキストデータからネットワーク図を描いてみました.
ノードの□はカテゴリー,〇は登場した用語を示します
医療カテゴリーは公共交通カテゴリーと関連していますが,もう少し医療だけ他のデータも併せて掘り下げようと思います.
地域医療情報システム−岐阜県高山市(日本医師会)
http://jmap.jp/cities/detail/city/21203
岐阜県保健医療計画(第7期)について(岐阜県)
https://www.pref.gifu.lg.jp/kodomo/iryo/horei/11229/7hokeniryokeikaku.html
第7章:将来あるべき医療提供体制の実現(地域医療構想)より高山市(飛騨圏域)に関係するところ抜粋
飛騨圏域の医療提供体制を見直すに当たっては、主に
「適正な役割分担」
「病床規模の適正化」
「経営基盤の効率化」の3つの視点
・高山赤十字病院が飛騨圏域の急性期医療の中心的役割を担う
・久美愛厚生病院が高山赤十字病院と連携して、ともに広大な飛騨圏域の急性期医療を
・高山赤十字病院、久美愛厚生病院について、診療科、病床区分の棲み分け等を含めた連携を検討
・久美愛厚生病院と高山厚生病院 病院間の関係の整理、位置づけについて研究、検討
補足・後書
補足は文中に記載しています |
活発な議論で楽しく且つ学びの多い機会になりました.ありがとうございました. 想い描く未来に関するところでは異なっていても構わないのは,その像がばらついていても議論を重ねることで現在から未来への流れが構築されていくということと理解しています. とらわれない議論の場を作る機能は,なんとなく所属組織や社会の中での立ち位置にとらわれないように,自分以外(未来人)を演じている体になることで現代社会のそれらから束縛され自分の本音を言っても許してもらえる環境になっているように思いました. 現在住む社会において堂々と本音を言えるシステムなのかもしれません.時間を未来に拡張することで不確定要素が出てくるので現代人から見て文句を言いにくい感じ. 住民の方や専門職の方など中の人々の対象に対する様々な知の活用という意味では,外の人間は上手く入り込めない. となると,住民の方や専門職の方に対して外の人間としての役割になりきってもらえるようにしていくことが,私達ができることなのだろうという理解です. それが「仮想将来世代」の手法は,その地域の未来において住んでいて知識は自分と同じだが別の人として演じてもらうということ. データ屋のスタンスとしては,可視化して中の人々に対して気付くキッカケを与えることなのかなと振り返った次第です. 資料 【開催報告】第114回フォーラム「フューチャー・デザイン・ワークショップ 2019」(東京財団) https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3009 |