大阪リハビリテーション専門学校作業療法学科 統計学2022

授業について

教科書

作業療法研究法(医歯薬出版株式会社)
https://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=216760


授業メニュー
第1回 研究法(1)量的研究(観察研究)

第2回 研究法(2)量的研究(介入研究),調査法

第3回 感度,特異度,ROC曲線

第4回 データの整理 尺度と度数,代表値と散布度

第5回 統計解析(1)推測統計の基礎

第6回 統計解析(2)2群間の比較

第7回 総まとめ(1)これまでの学修内容と資格試験

第8回 総まとめ(2)計算問題

第1回 研究法(1)量的研究(観察研究)

到達目標
1-1観察研究の方法について説明できる
1-2相対危険をリスク比で求められない場合があることを説明できる

教科書P1-7,10-17,34-37,80,100

知っておいてほしい用語

様々な場面で出てくる用語

臨床と研究

臨床・・・医療を実践している場
臨床研究・・・臨床の場で生じた疑問や仮説についての探究

倫理

臨床倫理と研究倫理の違いについて整理
臨床・・・対象者の生活向上を
研究・・・新たな学術的知見の獲得に向けて
どちらも対象者への同意が必要
臨床を中心とした研究となると因果関係(原因と結果)の話が主題

因果関係を求める

リスクの評価・・・どの程度原因によって危険になったのか
この教科書ではリスク比を相対危険としている.
リスクの評価指標の事を「相対危険」や「相対危険度」と読むケースが多いように思う
説明用データ
疾病発症 疾病無
曝露有 A B A+B
曝露無 C D C+D
A+C B+D
それぞれのリスク(どれだけ危険なのか)を求めて想定される原因に曝露されたか否かをもとめると良い...リスク比
曝露有群の発症リスク=A/(A+B)
曝露無群の発症リスク=C/(C+D)
リスク比=A/(A+B)/C/(C+D)

観察研究

生態学的研究

1)ある時点での集団と異なる集団の要因と状態を比較
2)集団で時点を変えて状態を比較
記述疫学の延長線・・・「仮説の設定」
あくまでも集団単位
記述疫学(一般社団法人日本疫学会)
https://jeaweb.jp/glossary/glossary002.html

横断研究

ある時点における個人単位での状態と要因について一度に調査
累積有病率など
因果関係を明らかにできない(原因(曝露)があって結果になる)

コホート研究

コホート・・・追跡する集団 結果より原因が先行する・・・原因(曝露)に基づく集団・・・曝露情報の妥当性が高い ・利点(時間の流れに沿った解釈が出来る 稀な曝露に対応できる) ・欠点(追跡にコストがかかる 稀な疾患には対応困難)

相対危険

リスク比を求めることが出来る

症例対照研究

症例群,対照群・・・過去に遡って追跡する集団 観察の方向性では原因より結果が先行する・・・結果に基づく集団・・・疾病発生情報の妥当性が高い ・利点(短時間で行える 稀な疾患に対応できる) ・欠点(曝露に関する妥当性が低い)

相対危険

リスク比を求めることが出来ない
オッズ比を用いる
オッズ比
Odds Ratio(OR)
危険な事象が起きた場合と起きなかった場合の指標の比(=オッズ)について曝露(介入)の有無毎に求め比をとったもの

発症有群の曝露オッズ=A/C
発症無群の曝露オッズ=B/D
オッズ比=A/C/B/D
    =AD/BC

リスク比(振り返り+α)

Risk Ratio(RR)
曝露(介入)の有る時と無の時の危険を示す指標の比
危険を示す指標には罹患率やら有病率やら死亡率やら

A~D:疾病発生頻度(頻度以外に罹患率やら有病率・・・)

曝露有群の発症リスク=A/(A+B)
曝露無群の発症リスク=C/(C+D)
リスク比=A/(A+B)/C/(C+D)
もし、発生頻度が低ければA+B≒B C+D≒D
 リスク比≒A/B/C/D=AD/BC
上記のように発症頻度が低ければオッズ比とリスク比の近似値となる

例題

コホート研究
不整脈あり 不整脈なし
曝露群 100 1900 2000
非曝露群 50 1950 2000
150 3850 4000
症例対照研究
不整脈あり 不整脈無し
曝露歴あり 50 30 80
曝露歴無し 50 70 120
100 100
それぞれ,リスク比とオッズ比を求めてみて,なぜ症例対照研究の場合相対危険を求めるのにリスク比が不適なのか説明せよ

第2回 研究法(2)量的研究(介入研究),調査法

到達目標
2-1介入研究と観察研究の違いについて説明できる
2-2研究で用いる調査法について説明できる

教科書P37-49,73,89-93

介入研究

実験研究ともいう

コホート研究との違い

曝露を研究者がコントロールしない・・・コホート研究
曝露を研究者がコントロールする・・・・介入研究
研究参加者に不利益が出ないように

群内前後比較試験

ワンアーム
介入群しか存在しない研究
集団の変化を前後(ビフォーアフター)比較で求める
ヒストリカル・コントロール試験
過去の類似集団を非介入群として比較

群間比較試験

基本系であるが,介入群と非介入群の割り付けによっては集団の特性が影響・・・交絡
例えば介入群と非介入群を被験者に選んでもらうと介入の好き嫌いで決まってしまったり
交絡とは
AとBの相関関係に変数Cが入り込んできている状態
相関
correlative
相関関係がある・・・関連がある
相関関係が無い・・・関連がない
他方の影響を受けるか受けないか


たばこを吸う-肺がん・・・・相関関係○

コーヒーを飲む-肺がん・・・相関関係○

コーヒー愛飲者に肺がんが多い理由は?生活習慣との関連を検証
アメリカで約50万人を対象にした調査から
from International journal of epidemiology
http://medley.life/news/item/5589521b660815fe00d5ec8e

コーヒーと肺がんの相関関係に割り込んでいる(どちらとも相関関係がある)状態=交絡
割り込んでいるそれ=交絡因子・・・たばこ
コーヒーと肺がんに因果関係が無いとしたならその関係は疑似相関

相関係数

-1から1までの値をとる
Xが増加すればYも増加する・・・1
Xが増加すればYは減少する・・・-1
Xが増加しようが減少しようがYは関係ない・・・0

X軸で見たときのバラツキ具合とY軸で見たときのバラツキ具合を元に計算してる
バラツキ=散布度・・・分散・・・偏差の二乗の平均
共分散=ある対象のX軸の偏差とY軸の偏差を乗じたものがベース
  
Xの偏差 Yの偏差 乗じた結果
乗じた結果の平均が共分散
共分散はX軸Y軸のバラツキ具合が混ざっているのでそのままの数字だと解釈しにくい→XとYの標準偏差で除する(正規化)→相関係数

標準偏差は集団のバラツキを示す指標の一つですが後日の授業で改めてゆっくりと
相関図
X軸とY軸に一つの対象に与えられるそれぞれの値をプロット(例:身長と体重)
とりあえず図にすると関係が直感的にわかる(場合がある)
nmuhlthstat1202107-02.png(9572 byte)

ランダム化比較試験

ランダム=無作為
対象から被験者を無作為に選ぶこと・・無作為抽出・・対象とする集団の状況を反映した被験者集団
被験者を群に無作為に割り当て  ・・無作為割付・・各群に被験者集団を反映した割付
選択バイアス
偏った抽出による偏りのこと
例:特定健診受診者を対象に過去の曝露を調査・・・対象とする集団を住民とすると偏っている可能性が高い
コホート研究や介入研究では生じにくい
無作為割付の話は選択後の話なのでゴチャゴチャニならないように
教科書は割付の話が出ているが,規則性が無ければ順番や曜日でも良いが準無作為割付.第三者(コンピュータ)が割付すれば作為の無いことが証明できる
情報バイアス
教科書のマスク化のくだり
情報が事実と異なることによる偏り
思い出しバイアス・・・例)曝露情報について症例群の方が必死に思い出そうとする
誤分類・・・被験者の属性を知ることで誤った分類(症状有/無のエラー)にする傾向が出てしまう ← マスク化により防ぐ

クロスオーバー試験

被験者が介入と非介入を両方担う方法
資料
手良向 聡,臨床試験におけるランダム化の意義と限界,計量生物学41巻 1 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjb/41/1/41_37/_article/-char/ja/
盲検性の維持(製薬協)
https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/2014tf6.html

データベース研究

既に蓄積されたデータを用いる
研究を目的としたデータでは無いので限界がある
レセプトデータ,DPCデータを用いて・・・医療費のためのデータ
利点・・・データセットの中で過去時間を自由に往来

調査票

答えやすく分析できるような設問を

ダブルバーレル

一つの設問で,二つ以上の要素を含む

特定の回答に誘導

→情報バイアス

選択回答形式

目的に応じて・・・分析の際の事を考えて
・単一回答法・・・二項,多項
・複数回答法・・・無制限,制限
・順位回答法・・・完全,一部
・一対比較法
・評定尺度法・・・評定法,SD法
・数値配分法

例題

統計でみる都道府県のすがた2022
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200502&tstat=000001162826&cycle=0&year=20220&month=0&tclass1=000001162827 統計表「人口・世帯」より
1)都道府県別の総人口と一般世帯数
2)都道府県別の総人口と一般世帯の平均人員
との関連を調べる
どのような関係があるのか 相関図より考えよ

第3回 感度,特異度,ROC曲線

到達目標
3-1臨床判断指標である感度,特異度について説明できる
3-2陽性尤度比,陰性尤度比を求めることが出来る
教科書P101
疾病発生と判断するのか?検査の結果から判断するにはどこかでYes/Noを判断しなくてはならない
ocrotstat2022-0301.png(344953 byte)
ocrotstat2022-0302.png(394121 byte)
ocrotstat2022-0303.png(266829 byte)
ocrotstat2022-0304.png(355176 byte)
カーブが左上に行くほど検査特性が優れている.(=AUCが大きくなる)
判断基準は諸々の要素が入るが1,0と0,1の対角線と曲線の交わる部分が目安.あとは検査の目的などによって変わってくる

例題

次のマンモグラフィの検査結果からROC曲線を描き、AUCを(小数点以下2桁まで求め四捨五入)求めよ。またカットオフ値を検討せよ
異常なし(1) 良性(2) 悪性を否定できない(3) 悪性の疑い(4) 悪性(5)
疾患群 1 1 6 14 18 40
非疾患群 5 14 15 6 0 40
補足
授業中に示したAUCの求め方
ROC曲線を縦にするとAUCの算出の際の台形の式にあてはめやすい
ocrotstat2022-0308.png(363529 byte)

第4回 データの整理 尺度と度数,代表値と散布度

到達目標
4-1測定尺度について説明できる
4-2標準偏差を求めることができる
教科書P78

変量(データ)の分類

変量は様々なものがあるがそれらの性質をとりまとめ分類することが出来る。
それぞれを尺度と呼び、4つに分類するのが一般的である
1分類尺度(名義尺度)
2順序尺度
3間隔尺度
4比尺度(比例)(比率)

1,2を質的変量(定性的)
3,4を量的変量(定量的)
性質としては上位互換性があり
4>3>2>1

統計量

取りまとめたものを「量で」示したもの.質的変数であっても度数(個数,人数など数えるもの)については「量」として示すことが出来る

度数

どのようなデータでも度数を示すことは可能
度数分布表
それぞれのデータ(変量)の数(出現頻度)をまとめたもの
変量が名義尺度の時は多い順(お作法として。但しその他を出すなら一番最後)
順序尺度以降であれば順(名義尺度でも比較のためにお作法を破ることはある)
度数  ・・・出現頻度
相対度数・・・総出現頻度を1(100%)としたときのそのぞれの度数のしめる割合
累積度数・・・上位の変量の度数もあわせた度数
累積相対度数・・・累積度数の相対版

品名 度数 相対度数 累積度数 累積相対度数
いちご 15
みかん
ぶどう
30 1.00 ----- -----
量的変数の場合はその数値だけで度数を積み上げようにもなかなか上手くいかない場合がある.
血圧 163.5mmHg 164.2mmHg 162.5mmHg・・・どれも度数を積み上げられない → 区間を設定する
「A~B」は過去の教科書では「A以上B未満」と読む格好で統一されていたが,現在は読み方を明記することと変わっている
「A以上B以下」とするとどちらの階級にも属してしまう場合がある.
階級 階級値 度数 相対度数 累積度数 累積相対度数
130~140 135
140~150 145
150~160 155
160~170 165
170~180 175
----- -----
<例題>こちらの度数分布表の空欄埋めてください
品名 度数 相対度数 累積度数 累積相対度数
かつ丼 90
カレーライス 0.3 0.75
ラーメン
1.00 ----- -----

記述統計量(代表値)

代表値と散布度からなる.←駅伝やマラソンの実況中継はこれらを利用しているから状況がわかる
平均(Mean)
Averageってexcel関数ありますが,あれ代表値って意味です.
いわゆる割り勘.xbar=1/n(x1+x2+・・・+xn)
欠点:外れ値があると平均値は分布の中心位置を示さない(←それって代表的な値??)
 → 対処法:外れ値を取り除くか中央値を使うか
中央値
昇順に並べたときに,真ん中の順番のデータ(変数)の値
データの数が偶数だと真ん中のデータは二つになるのでそれらの平均値
最頻値
最も個数が多いデータの値
最頻値は複数存在する場合がある→二峰性

記述統計量(散布度)

範囲
最大値と最小値の差
四分位範囲
IQR=第3四分位数(75%点)-第1四分位数(25%点)(参考:中央値=第2四分位数(50%点))
第3四分位数(75%点)の算出方法は数多くありまして・・・
標準偏差
範囲を用いた散布度と違い,平均値からのバラツキ(差=偏差)の平均を求めようというもの
ただし偏差の平均をとれば集団内の各々のズレっぷりがわかると思って計算しても → 合計は常に0 故に平均も常に0
そこで偏差を二乗したものの平均を取っている → 分散
標準偏差は分散の正の平方根をとったもの
nmubiostat2016-0302.png(3064 byte)

例題

以下の表より病院に勤務する作業療法士の平均値,中央値,範囲,標準偏差を求めよ.
ocrotstat2022-0401.png(31446 byte)
CSVデータはコチラ
<資料>令和3年度病床機能報告の報告結果について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/open_data_00008.html

第5回 統計解析(1)推測統計の基礎

到達目標
5-1検定と推定の違いについて説明できる
5-2正規分布表を理解し確率と統計量の関係を説明できる
教科書P76-78

点推定

一つの数値(点)で推定値を示すこと
欠点:推定値と真の値がどの程度ズレているのかよくわからない
利点:区間推定よりも簡単に算出できる

区間推定

ある確率分布に従うと仮定したときに、その分布に基づき、推定に幅を持たせもの
欠点:点推定の計算に加え区間を求めるための計算が必要
利点:真の値を区間内に含む確率を示すことで,どの程度ズレているのか(なんとなく)わかる


不偏推定量

母数の推定=不偏推定量
算術平均・・・母平均の点推定値
分散・・・母分散の推定値としたいところだが・・・

標本平均値は偏っていないが標本分散は偏っている
以下の例を見てもらうと
コチラをクリック
<参考>不偏分散は何故nではなく(n-1)で除するのか(生物統計学2018奈良医大)
https://medbb.net/education/nmubiostat2018/index.html#VAR

区間推定

ある確率分布に従うと仮定したときに、その分布に基づき、推定に幅を持たせる
母平均にある確率で入る幅を持った推定値
母平均は一つ(当然)だが、標本平均は標本ごとに異なる(当然)ので幅を持たせてある確率(95%)で母平均を表せるように
その幅は平均値のバラツキ具合(標準誤差)に信頼区間を表わす係数(標準正規分布表に基づき95%なら1.96)を掛け合わせたもの
orcstat2020-0602.png(17719 byte)

標準偏差と標準誤差

・標準偏差は標本の分布のバラツキ具合を示したもの
・標準誤差は母集団から抽出した標本の平均値のバラツキ具合
SE=σ/√n
標準誤差SEはなぜ標準偏差σを√nで除するのか
標準誤差は母平均に対する標本平均のバラつき指標(標準偏差)の話
対象が母集団全体ならば0だが,母平均(μ)と標本平均(xbar)には差が生じる
ある標本における平均値と母平均の偏差平方は
(xbar-μ)
=((1/n)Σx-μ)
=((1/n)Σx-(1/n)Σμ)
=((1/n)Σ(x-μ))
=(1/n)(1/n)Σ(x-μ)
 -----
 ここで
 (1/n)Σ(x-μ)
 をσとおくと
 -----
=σ/n
故に標準誤差は
SE=σ/√n

正規分布

人など生物の成長に関わるものなどは、正規分布に近いとされている
平均値μと分散σ^2で確率が決まる
常に曲線下の面積=1(100%)。といって裾野は広がるばかりで閉じない
中心極限定理によりかなり強力(通用しない相手にコーシー分布がいる)

中心極限定理

母集団の分布によらず、抽出した標本の平均値は表本数が大きくなるほど近似的に正規分布に従う

標準正規確率(z)分布表の見方

教科書に標準正規分布表は付いています.念のため以下に作成したものつけています.
標準正規分布表
kuswepi2021-01.png(339177 byte)
標準正規分布表のPDF版はコチラから

例題

先に示した血圧データを用いて標準正規分布より95%信頼区間で推定せよ

第6回 統計解析(2)2群間の比較

到達目標
6-1t分布を説明できる
6-2検定の多重性について説明できる
教科書P76-81,P87-88

t分布

2群の平均値の推定や検定において,標準正規分布を使うと上手くいかない・・・特に標本数が少ないと
困っていたゴセットさんが標本数によって平均値の出現する確率が変化する分布を示しました.
諸々の理由でt分布と呼ばれています.
酒井 弘憲,ギネスビールと統計家ペンネーム スチューデント,ファルマシア51巻12号,2015
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/51/12/51_1168/_article/-char/ja
正規分布は母集団の分散(標準偏差)が必要で変化しないが,t分布は標本より求めた不偏分散を用いるが,標本の自由度(標本数より求める)によって変化する.
故に標本数が多くなるとt分布は正規分布に近似されていく.
nmuhims2022-01.png(169858 byte)
t分布のPDF版はコチラから

「自由度」νが出てきますが,以下考え方

標本の中で自由に振る舞うことが許されている値の数
例えば標本から平均を求めたとき,その平均が母数の推定値としたら、自由に振る舞えない値が出てくる(つじつま合わせ)

検定

orcstat2020-0603.png(12754 byte)
二つの仮説(本当に証明したい仮説=H1対立仮説と,H0帰無仮説)を基準とする確率(有意水準α)に基づきいずれかを採択する.
流れは帰無仮説を棄却するかしないか→棄却した場合は対立仮説
H0 μ=0
H1 μ≠0
という感じで検定する人は帰無仮説は世の中的に想定内 対立仮説は想定外 という恰好で帰無仮説を棄却して対立仮説を採択することを祈っている(と思う)
仮説検定を行う理由は,既に仮説があって立証する形をとっているからです.
「後出しじゃんけん」だと偶然出た結果であってもなんでも言えるわけで,本当なの?となってしまいます.
詳しい話は以下の資料を読んでいただけると良いかなと思います.
<参考>研究におけるデータ収集と統計処理について-医の共通科目(奈良県立医科大学大学院医学研究科)
https://medbb.net/education/nmucsmed2022/

検定の流れ

1:帰無仮説H0,対立仮説H1を設定(対立仮説が証明したい説)
2:有意水準を定める(通常5% 0.05)
3:標本より求めたデータから検定統計量を求める(t分布を使うならt値,正規分布を使うならZ値)
 <母集団から見た標本の平均値>
 t=(集団の平均値-母集団の平均値)/標準誤差
 <集団内の個々の観測値>
 z=(観測値-その集団の平均値)/標準偏差
 <母集団から見た標本の平均値>
 =(集団の平均値-母集団の平均値)/標準誤差
4:検定統計量からその標本がどの程度の確率でおこる事柄か確率Pを求める(統計表より)
5a:P値が有意水準よりも小さい場合は帰無仮説を棄却し対立仮説を採択(違いがある)
5b:P値が有意水準よりも大きい場合は判定保留(元々の仮説がるので今回証明できなかっただけ.無論何回も実験を行い証明が出来ないと・・・)
有意水準よりも小さい確率の領域を棄却域,有意水準よりも大きい確率の領域を採択域・・・どちらも帰無仮説を基準の名称になっています.
基本は確率(P値と有意水準)で採択域か棄却域か判断するのですが,実際には検定統計量同士で比較するケースの方が多くなるかと思います.
大小関係を整理しておかないとわからなくなるので,確率分布図を思い浮かべていただけたら混乱しないと思います

t検定

2群の平均値に差があるのかを統計的に検証
t分布を使う(参考 正規分布を使うのはz検定)
(一群のt検定もあるがそれは割愛)
関連のある2群(一標本)と関連の無い2群(二標本)のケースがある

独立2群

異なる二つの群(例:何かを施した群と何もしていない群)の平均値の比較
計算するにあたっては,それぞれの群の分散(標準偏差)を合成するので,あまりにも異なる場合はそれ用のWelchのt検定を用いる
(最初からWelchのt検定を行ったほうが良いという説を支持しています)

関連2群

ビフォーアフターなど,同じ対象に対して2回測定したデータを用いる.
それぞれ前後の差分をとり平均したものを用いる,差が無ければ0.効果があったら値が0とは異なる
paired-t検定とよばれる

頑健性(ロバストネス)

母集団の分部が正規分布であることを前提としているが・・・

例題

例題1

リハビリ前後の患者さんの動作にかかる時間を測定したところ以下の結果になった.
効果があったのか検定せよ
ocrotstat2022-0601.png(83754 byte)
CSVデータはコチラ

例題2

教科書P79の表3-3についてリハビリの効果について検定せよ
積み残し
多重検定の部分

第7回 総まとめ(1)これまでの学修内容と資格試験

到達目標
7-1統計が専門領域でどのように関与しているのか理解する
7-2これまでの授業で取り上げた内容に関連する部分を理解する

第n回理学療法士国家試験、第n回作業療法士国家試験の問題および正答について(厚生労働省)

第48回

第49回

第50回

第51回

第52回

第53回

第54回

第55回

第56回

第57回

関連する内容

57(FY2021)

57AM22
感度・特異度について正しいのはどれか。
1. 血液検査は特異度が高い。
2. 感度が高いと見落としが多い。
3. 特異度が高いと過剰診断が少ない。
4. 信頼区間が広いと再現性が高くなる。
5. 感度の高い検査としてエックス線による肺がんの発見がある。
57AM23
作業療法における効果判定について正しいのはどれか。
1. 再評価は異なる尺度で行う。
2. 自然回復の影響は考慮しない。
3. 可能な限り質的なデータで示す。
4. 結果の前後比較のみで判断する。
5. プログラム再検討の判断材料とする。
57AM39
中央値の説明として正しいのはどれか。
1. データの最大値から最小値を引いた値
2. 全データの中で最もデータの数が多い値
3. データの総和をデータの個数で割った値
4. データの値を小さい順に並べ変えたとき、真ん中に位置する値
5. 各データから平均値を引いたものを乗した総和をデータの個数で割った値

56(FY2020)

56AM26
反復唾液嚥下テストのカットオフ値は 30 秒間に何回か。
1. 1回
2. 3回
3. 5回
4. 7回
5. 9回
56AM39
エビデンスレベルが最も高いのはどれか。
1. 症例報告
2. コホート研究
3. 症例対照研究
4. ランダム化比較試験
5. 非ランダム化比較試験
56PM21
感染症のスクリーニング検査の特異度で正しいのはどれか。
1. 感染していない人で検査陽性と判定される割合
2. 感染していない人で検査陰性と判定される割合
3. 感染している人で検査陰性と判定される割合
4. 検査が陰性で感染していない人の割合
5. 検査が陽性で感染している人の割合

55(FY2019)

55AM39

変数と尺度の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
1. MMT 順序尺度
2. 性 別 順序尺度
3. 体 温 間隔尺度
4. 知能指数 比率尺度
5. 暦 年 比率尺度

54(FY2018)

54PM39
作業療法研究においてエビデンスレベルが最も高いのはどれか。
1. 専門家委員会の報告
2. 1つのランダム化比較試験
3. よくデザインされた記述的研究
4. よくデザインされた準実験的研究
5. 複数のランダム化比較試験のメタ分析

53(FY2017)

53PM22
記述検定に用いる手法はどれか
1. カイ二乗検定
2. 度数分布
3. 分散分析
4. 多変量解析
5. Mann-WhitenyのU検定

52(FY2016)

52AM22
研究法の説明で正しいのはどれか。
1. 横断研究は症例の経過を追って情報収集する。
2. メタアナリシスは多数の研究を数量的に統合して検討する。
3. 留め置き調査法は集団で実施した調査票をその場で回収する。
4. 縦断研究は年齢の異なる集団を同時期に調査して年齢群を比較する。
5. ABA 型のシングルケースデザインは2種目の治療介入効果を立証できる。
52PM22
あるスクリーニングテストの結果を表に示す。このテストの感度はどれか。
疾患あり 疾患なし
テスト陽性 20 人 20 人
テスト陰性 5 人 30 人
小 計 25 人 50 人
1. 20 %
2. 40 %
3. 50 %
4. 60 %
5. 80 %

51(FY2015)

51AM37
間隔尺度を用いる評価法はどれか。
1. FIM
2. MMT
3. Rehab
4. ROM
5. STEF
51PM36
エビデンスレベルの高い順に左から並べたのはどれか。
1. 症例検討 → 前後比較研究 → メタアナリシス
2. 症例検討 → メタアナリシス → 前後比較研究
3. 前後比較研究 → 症例検討 → メタアナリシス
4. メタアナリシス → 症例検討 → 前後比較研究
5. メタアナリシス → 前後比較研究 → 症例検討
51PM39
評価尺度について正しいのはどれか。 1. 妥当性の検討法の1つとして再検査法がある。
2. 信頼性の検討には他の標準的尺度との相関関係をみる。
3. 名義尺度で用いられる代表値に中央値がある。
4. 順序尺度で用いられる代表値に平均値がある。
5. 間隔尺度で測定された2群の平均値の差の検定法に t 検定がある。

50(FY2014)

50AM38
脳卒中片麻痺患者(右片麻痺 30 名、左片麻痺 30 名)を対象に、自助具の使用について調査した。回答は右片麻痺患者で「使いやすい」13 名、「使いにくい」17 名、左片麻痺患者で「使いやすい」15 名、「使いにくい」15 名であった。麻痺側による回答の違いを統計学的に検定する方法はどれか。
1. t 検定
2. カイ二乗検定
3. 符号検定
4. Mann-Whitney 検定
5. Wilcoxon 符号付順位検定

49(FY2013)

49PM37
研究法の説明で誤っているのはどれか。
1. 記述的研究は、質的研究である。
2. 横断研究では、症例の経過を追って情報収集する。
3. 後ろ向き調査とは、過去に遡って情報収集する調査である。
4. メタアナリシスは、多数の研究を数量的に合成し統合して検討する。
5. 留め置き調査法では、対象者に配布した調査票を調査員が回収する。

授業では取り上げなかったが理解しておいてほしい部分

メタアナリシス
教科書P71
信頼性 妥当性
教科書P68
カイ二乗検定
教科書P80
分散分析
教科書P82
重回帰分析
教科書P94