奈良学園大学 在宅看護学特論W2020(分担:保健・医療統計))
(大学院看護学研究科)

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第6回〜7回 保健・医療統計@A



第6回〜7回 保健・医療統計@A

到達目標
地域の特性を把握するための保健・医療統計を理解する
1地域間のデータを比較できるようになる
2比と率と割合の違いを説明できるようになる
3統計化することで失う情報があることを説明できる

データ分析にあたって

一次データと二次データ

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データは目的に応じて丸めたり切ったりしてしまうので二次利用の場合は注意が必要。
とりあえず収集してデータベース構築が目的(データを活用してもらうことが目的)ならば、想定される利用(二次利用)に耐えうるデータを目指さなければ意味が無い(一次利用の目的を達成できない)
・一次データは情報源からダイレクトに取得するので粒度を目的にあわせてコントロールしている
・二次データは本来の目的と異なるデータ活用となるので、その目的に対してデータの粒度があわない事がある(細かい場合は粗くできるが粗いものは推定するしかない)

地域×保健医療(データの観点から)

公衆衛生と個人衛生(保健学)の違い
集団からみていく地域の話・・・公衆衛生
個人からみていく地域の話・・・地域保健医療・・・それって違うの?

周藤が考える地域(保健)医療学(2016)

1)集団(地域)内における健康問題に関する公正性の担保を、集団(地域)内外の資源を活用して実現するための学問領域
「地域完結型医療」というのは「病院完結型医療」に対するアンチテーゼとして打ち出されたたもので、地域(集団)の人々の健康問題の解決に必要なリソースは地域外にあってもかまわない

2)地域(集団)間の健康格差の縮小を目指すのは公衆衛生学と同じところではあるが、そのアプローチに公平性を求めていない
公衆衛生学・・・地域(集団)への公平な取り組みによる公正(健康格差の縮小)
地域(保健)医療学・・・他地域(集団)と公平ではないかもしれない現状を前提とした取り組みによる公正(健康格差の縮小)

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地域と医療の統合に資する情報活用の考え方−不足の観点からみる医療2.10− より)

ratio
異なるもので割ったもの・・・単位は無次元の場合もある
例)BMI(Body Mass Index)
身長の二乗(m^2)に対する体重(kg)の比
身長170cmで体重70kgの人のBMI・・・70/(1.7^2)≒24.2
検査表の見方(日本人間ドック学会)
http://www.ningen-dock.jp/public/method

rate
時間に対する何かの量の比・・・単位は無次元の場合もある
変化を表す指標
例)時速
マラソン(42.195km)を2時間6分で走った場合の時速・・・42.195/2.1≒20.1km/h
100m走を10秒で走った場合の時速・・・0.1/(10/3600)=36km/h

無次元の例としては稼働率
稼働率(JIT基本用語集)
http://www.lean-manufacturing-japan.jp/jit/cat241/post-74.html
時間を時間で割るので無次元

割合(比率)

proportion
全体に対してその一部がどの程度占めるか割ったもの・・・単位は無次元になる
0〜1の間の値をとるpercentで表示したりする。100%を超えるのは本来おかしい
例)日本人の血液型の割合
A型 約40%
B型 約20%
O型 約30%
AB型 約10%

人年法

一人の人を一年観察したとき1人年
人年に対する何かの量の比・・・率になる
例)5人の患者を1年間観察していた時に二人死亡
Aさん 1年後生存
Bさん 3ヶ月後に死亡
Cさん 9ヶ月後に死亡
Dさん 1年後生存
Eさん 1年後生存
<本来の死亡率算出>
観察人年=1+0.25+0.75+1+1=4人年
その間の死亡数が2なので
2/4=0.5 「1人年対0.5の死亡率」
<年央人口を用いる方法だと>
6ヶ月経過の時点での生存者4人
1年経過後の集団の死亡数が2なので
2/4=0.5 「1人年対0.5の死亡率」

<参考>
厚生労働統計に用いる主な比率及び用語の解説(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/kaisetu/index-hw.html
人年法の計算と利用方法,青木伸雄,日本循環器管理研究協議会雑誌 26(1),64-66,1991
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcdp1974/26/1/26_1_64/_article/-char/ja/


厚生労働統計一覧

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/


例えば
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地域包括と医療の妙な関係−不足の観点からみる医療2.20− より)
ここでは,上記のページに示しているデータからで介護を必要とする方々を支えているのかの可視化を最新のデータで明らかにしてみようと思います

授業後補足