データ連係がもたらす地域の可視化−不足の観点からみる医療2.30−

2018年度第4回 福知山公立大学地域創生セミナー

(会期)2019年2月20日 (開催場所)京都府福知山市 交流プラザふくちやま
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データ同士の繋がりをキーにした話になりますので自己紹介も繋がりを意識しながら.
そこから地域における医療を考えるときにどのようなデータがどのように使われてきたのか.
そして連係することでどのような新しい価値が見えてきたのか,利活用の際に気になる点などについても述べていきます.

1.自己紹介(私とデータ)

データだけではうまく表わせない私の人生についてなど諸々興味のある方は後ほど

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学部4回生の時に研究室配属になったのが医療情報学.これが今に繋がっています.
研究室の先輩も,大学院修了後の大学への着任は学会で発表したのが発端になった縁とお聞きしています.

この時代の色々な繋がりが潜んでいる象徴がコレ
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産学官連携マネジメント論(分担:地域医療と産学官連携) より)

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システムを導入するだけではなく,たまっていくデータを活用して還元できないかといろいろ取り組みました

このスライドの話興味のある方は以下に抜粋した資料を載せています (スライド抜粋)データ共有と分析で実現する産婦人科病院に役立つ指標の作成
http://www.medbb.net/education/joho20180727/index.html#medicuser20100313

小阪時代は未だ終わることなく繋がっております.

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当時のサイトが残っています
http://www.coe-cnas.jp/archive.html
個々の研究班の成果を一つのサイトとしてまとめることの難しさを痛感しました.

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その後福知山並びに近隣地域の方には大変お世話になりました.

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この時期の経験は色々な場面で役に立っています.
さて,福知山を巣立つわけですがと,この時代を振り返っているメールが出てきたので抜粋・編集して記しておきます.
学生副部長だったのですが,学生委員の皆様が私のために送別会をしてくださったのですが,その時のお礼のメールです.
学生委員の皆様  昨日(一昨日)は、ありがとうございました。 かなり美味しいお酒でしたので、量も結構飲んでしまったようですが良いお酒だったので、二日酔いにもならず良い想い出だけが残りました。 ありがとうございました。

研究室とアパートを同時に片付けていますが、アパートは楽なのですが研究室は大変。 研究室に根を張っていたのだと痛感しました。
アパートの滞在時間よりも研究室の滞在時間のほうがはるかに長かったですし。 昨日は酔っ払って(なくてもですが)話が上手くできなかったので、 以下で振り返っておきます。
6年4ヶ月でしたが簡単にあらすじだけ

最初の3年間は,医療福祉マネジメント学科の誕生とともに始まりました。 診療情報管理士を養成しながら、私自身も診療情報管理士にならないといけないプレッシャーは、結構なものでした。 学科長といろいろ話をしたのも懐かしい思い出です。
次の2年は
管理士育成に対して感触がわかる教員が少ない中で協力しながら様々な取り組みをした時期です。カリキュラムの変更なども行い、これは紀要論文や 後の学会発表に繋がりました。
そして最後の1年4カ月は
学生に対する教育のスタンスが少しづつ変わっていきました。 もともと、授業の中でキッチリ合格レベルまで持っていけないことに対して罪滅ぼしの意味で始めたのが、試験対策講座だったのですが、 恒常化してしまっていることに疑問を感じはじめていました。
結局学生自身が能動的に学修しないと合格しませんから、どのようにしたらスイッチが入るのか。結果として学生が自ら手を上げ研究を行い学会発表をするなど、自発的に物事に取り組む姿勢を持てるような教育が出来たのかなと思っています。 本学での物語はここで終わりです。
この先についてはあちらの大学でどうなるのか楽しみなところです。

さて ゼミの学生には、退職について報告したとき、あなた達の未来に私が貢献できるチャンスであることを説明しました。退職することについて誰も文句を言いませんでした。
ゼミの学生達と昨日出会いましたが、話しかけるといつも通りの表情で(でもすこし笑顔かな)喋ってくれます。たくましいことをいってくれたりもします。

ドラえもんの話で、ドラえもんが未来に帰る話があります。そこでは、のび太が心配をかけまいと決意してジャイアンに立ち向かうわけですが、その姿とゼミ生をオーバーラップさせてしまっています。 ドラえもんはすぐ戻ってきましたが・・・
最後になりましたが、皆様のご健康とご活躍をお祈り申し上げ御礼のご挨拶と致します。
ちなみに本当の最終日は学生寮に行かなくてはいけなくなったりで教職員の皆様にもまともにご挨拶できないまま

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奈良医大は1県に一つしか医育機関がありません.
公立一医大の自治体は福島,和歌山,奈良の3県です.
県の医療政策の部署との繋がりは他よりもかなり強いものと思います.

これまでの医学医療に対する視点と全く異なるところからのアプローチで当初は戸惑いながらでした,

2地域医療におけるデータの役割

奈良県は当時としては非常にデータに対する認識・期待が高かったように思います.平成22年度には救急搬送のデータ利活用を推進していました
<参考>e-MATCHによる奈良県の救急医療体制改善への支援−ICT地域活性化事例 100選(総務省ICT地域活性化ポータル)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/local_support/ict/jirei/2017_043.html

データ分析で関わったものに奈良県南部の病院再編がありました
新しくなる南和の医療〜南奈良総合医療センター開院を迎えて〜 (奈良!そこが知りたい 奈良県)
http://www.pref.nara.jp/42501.htm
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経緯に関しては南和広域医療企業団のページに掲載されています
南和医療圏の現状(南和広域医療企業団)
http://nanwairyou.jp/about/iryoken/status.html
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この件は講座として取り組んだのですが,同時期に県立医大医師派遣センターが開設しています.
これは,奈良医大が医師のキャリア形成と奈良県内医療機関への適正な医師派遣を両立させることを目的としたセンターで,講座の検証を踏まえた上で医師が派遣される仕組みです.
本件に関するところの奈良県立医科大学県立医大医師派遣センターの実績は下記の評価資料で登場しています.
県立医大医師派遣センターによる医師派遣について平成29年7月(奈良県医師配置評価委員会)
http://www.pref.nara.jp/secure/157181/H28hyoukasyo.pdf

3.データの連係

データ単体の利用もありますが,他のデータと突き合わせて活用することがあります.

<参考>以前に講義で取り上げた例
オープンデータで読み解く地域包括ケア −不足の観点からみる医療2.21−
http://www.medbb.net/education/joho20170721/index.html

ここでは医師数の話を中心に進めていきます
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複数のデータを連携させることでつじつまが合わなくなる場合があります.そんなことは無いだろうと思ってデータを使われるかと思いますが誰しも間違えてしまうので
あとは複数のデータを連携させることで指標を算出することが可能になります.そのような格好で医師数を算出し比較するという方法を使っています
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医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/33-20.html
医療施設調査(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/79-1.html
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必要医師数実態調査は平成22年6月に全国で実施された調査です. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/hitsuyouishisuu/index.html
奈良県は,その後も2年おきに実施しています
実際にどのような結果が得られたか,簡単に報告しておきます

こちらは医師数を算出する話です.
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患者調査(厚生労働省)(地域)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html
病床機能報告制度(厚生労働省)(施設)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055891.html
医療計画(地域)
奈良県保健医療計画(奈良県)
http://www.pref.nara.jp/2740.htm
京都府保健医療計画(2018年度〜2023年度)(京都府)
http://www.pref.kyoto.jp/hofukuki/
医療機能情報提供制度(医療情報ネット)(厚生労働省)(施設)
医療機能情報提供制度(医療情報ネット)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/index.html
日本の地域別将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所)(地域・施設)
『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』
http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson18/t-page.asp
あとはDPC,NDB,KDBなどの医療実績もありますが・・・
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こちらはWeb公開されているものは少ないためどこかで入手しないと難しい
病院経営収支調査【平成15年調査をもって廃止】(厚生労働省)(施設)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/156-15.html
【再掲】医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)(地域)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/33-20.html
病院経営分析調査報告(一般社団法人全国公私病院連盟)
外保連試案(外科系学会社会保険委員会連合)

4.データの利活用に向けて

これまで,私が経験したことを中心に述べましたが,活用するにあたっていろいろ fukuchiyama20190220-19.png(288717 byte) 非常に期待が高いわけで,データが持つ説得力に飲み込まれそうになりませんか?
説得できたとしてもデータが実態を伴わないなとなかなか納得してもらえないわけで,特に実感が湧きにくい話は聞き手の願望に依存してしまったり.
主観の統計データが客観的に見えるのは,主観により発生する個々のバラつきを量によって打ち消しあうから(と思うから)
小集団のレベルではデータが無くてもだれしもが納得できる事柄もあるかと思いますが,地域レベルになるとなかなか難しい
期待を裏切らないデータであることと,それに基づく話と議論が一緒な方向に向くように
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お金の話をするときは工数単価でみるので1.6工数とかでても別に不思議ではないのですが,実際の作業は一人で行うべきものがあったり3人じゃないと無理なものもあります.
この部分を織り込んだ数値指標は作れない.複数の指標が必要になってくる→トータルで判断
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データ分析していく過程で同一の調査データで比較できないことはありえるかもしれません.
しかしながらデータはキチンと立っていませんから独り歩きを始めます.そのときには異なるデータで比較した話はどこかに置き去りにされることでしょう.
それが検証の上であれば立ち返れますが,そうでなければ大変なことになりかねません

補足・後書

このような格好で福知山で話す機会が来るとは想定していませんでした.ありがとうございました.
福知山から奈良に移ってからの私自身を振り返っているような気分でまとめました.
医師数の話は奥が深く,人材育成の話から地域の人口変動や疾病の話など,結局社会全体を見ないといけないと赴任後数年たって気が付いた次第です.
さて,今日の資料を作っている最中に以下のニュースが
医師数に関するところでは「医師少数3次医療圏」が設定されました.
医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第28回)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208863_00010.html
三次医療圏の偏在と二次医療圏の偏在の話は分けて議論しないとよろしくない状況になりかねない部分もあります.国としては全量を調整して,それを都道府県単位でうまくバランスとるという格好
都府県は全量をみて二次医療圏単位でうまくバランスをとるという格好(北海道は三次医療圏が6圏域なので).となるとボトムアップ的な議論を地域(医療施設・住民)で行うことが必要と思っています.