特別講義 オープンデータで読み解く地域包括ケア −不足の観点からみる医療2.21−

(会期)2017年7月21日(開催場所)大阪府大阪市 大阪情報専門学校

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1.自己紹介

自己紹介ですがネット上で公開されている(している)のは以下のような感じです
http://www.medbb.net/profile.html

2.オープンデータ

さまざまなところでデータが生成され集積し利用されていく社会になってきています。
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今年は特に著作権法、個人情報保護法も新聞紙面を賑わせたのも記憶に新しいところ
<参考>
JASRAC、京大から著作権使用料「請求しません」(ITmedia ビジネスオンライン)
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1705/25/news086.html
改正個人情報保護法が本日いよいよ施行、ビッグデータの活用が進むか(TechCrunch Japan)
http://jp.techcrunch.com/2017/05/29/personal-information/
これは個人情報保護法が施行される前の頃に私が話した時のもの(抜粋ですが)
個人情報の保護に関する病院の義務と責任〜個人情報保護法の施行へ向けて〜
http://www.medbb.net/education/nmumedinfo2016/index.html#APPI20041124
カルテを例に出しましたが、不明なところがあれば以下の授業資料参照ください
保健医療情報システム(U)−電子カルテについて(大阪保健医療大学 医療情報学2016)
http://www.medbb.net/education/ohsumedinfo2016/#6

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(図中のスライドは よりよい医療に貢献する医療情報技師の役割 より)
講演会やセミナーなどでいい加減にメモをすると、後で見ても意味不明な言葉の羅列にしか見えないことがあります
自分がみてもわからないぐらいですから、公開して使ってもらうにもどうしようもありません
アウトプットすることを意識してまとめるクセを今の間に培ってください
私の場合は学生時代に試験前になってから教科書に書き込んだメモをA4一枚のテスト直前対策資料にまとめ直していました。最終的に試験でアウトプットするわけですが授業中のメモは、そのことを意識していました
教員になって、このようにホームページで(出来る限り)内容を公開するようにしておりますが、外を意識することで(色々大変ですが)良い効果を期待できるので実践しております。
<参考>
授業に対する考え(情報通信技術の活用による効果的な学修環境の構築についてより)
http://www.medbb.net/education/kgufd20170120/index.html#-07

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とりまとまっていないと(他者が利用可能な)オープンデータにはならない
自由に使っていただくには、著作権は権利を主張(登録)しなくても勝手に発生する
<参考>
著作者の権利の発生及び保護期間について(文化庁)
http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/hogokikan.html

そこで著作権を放棄していない「使ってよいですよ」という話になりますが、色々な横文字が出てきますが、なにかしら見たことありません?

<参考>
GPLやMITやCCなど主要ライセンスの内容と意味のまとめ(ITキヲスク)
http://smkn.xsrv.jp/blog/2009/03/summary_for_gpl_mit_cc_etc/
コピーレフトって何?(フリーソフトウェアファウンデーション)
https://www.gnu.org/licenses/copyleft.ja.html

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ここではデータのユーザービリティと表現をしました。製品の場合は(一次)目的が明確ですが、オープンデータは多くの利用目的に耐えられるタフさが要求されると考えています。
他のデータとどこまでシンプルにリンク出来るのかだと
<参考>
統計LODの概要(e-stat統計LOD)
https://data.e-stat.go.jp/lodw/outline/abstraction/
ISO 9241-11(Modeless and Modal)
http://modelessdesign.com/modelessandmodal/2009/11/25/iso-9241-11/

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コンピューターはキチンと教えてあげないと作業してくれないが、その指示が煩雑になると結局面倒なので力技でなんとかしてしまう人が多数のようです
ならば、とりまとめたデータであればそれで大丈夫ということでもなく、意図(軸)があるわけで。
結構注意が必要で、データ分析していて他のデータとリンクさせてから結果をみると辻褄あわなくなったり(経験上)

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<参考>
世界最先端IT国家創造宣言(抄)はこのページから。機械判読3☆の話もこちらのサイトにありました。様々な取り組みがわかります。
政府全体の取組(オープンデータ戦略の推進 総務省)
http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictriyou/opendata/opendata02.html

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医療施設調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/79-1.html
病院報告
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/80-1.html
介護サービス施設・事業所調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/24-22-2.html
介護従事者処遇状況等調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/151-2.html
介護保険事業状況報告
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/84-1.html
平成27年国勢調査
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/
社会福祉施設等調査報告
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/23-22.html
などなどありますが、今回は「住まい」に関わる部分のみで

3.地域包括ケア

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地域包括と医療の妙な関係−不足の観点からみる医療2.20− より)
地域包括ケアは、「住まい」「予防」「介護」「医療」を上手く組み合わせて、住民がその地域で生活できる仕組みの話
下のスライドはオープンデータを用いてどのような従事者がどのような比率なのか医療と介護の領域の比較して、今後現場で得られた知見をどのように一般化して伝えていくのかについて、あれこれ

ここでは、オープンデータを組み合わせて地域包括ケアに関するところで地域によって求められている事柄が違うことを可視化してみようと思います
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地域と医療の統合に資する 情報活用の考え方 −不足の観点からみる医療2.10− より)
の「生活の場」と定義している部分の話。
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財務省の観点をベースに、実際に地域によってどのような格好で介護を必要とする方々を支えているのかオープンデータから可視化してみようと思います。

平成27年国勢調査より
第6表 世帯の種類(2区分),世帯の家族類型(16区分),施設等の世帯の種類(6区分),配偶関係(4区分),年齢(5歳階級),男女別世帯人員及び平均年齢(3世代世帯-特掲)

ここではそれぞれ府県単位で年齢区分でどのような人口構成になっているのか求められます
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この部分は講義中にみなさんと一緒に実習形式で行っていただきましたが、その時の数字と一部異なっていたと思います。老年人口(単独)のところが、 単独世帯 だけではなく 世帯の家族類型「不詳」 を含めた計算がこちらのページです。
講義では 単独世帯 だけで計算しました。
比較は、自己紹介のとおり私と関連深い地域である大阪府、奈良県、島根県で行います
興味深いのは老年人口あたりの生産年齢人口が大阪府は多いのですが、単独世帯の高齢者の方で計算しなおすと島根県より少ないという結果になります。
これは住まいにおいて援助してくれる方のいない高齢者が多いことは、地域における互助や介護サービスの必要度の高い地域となります

実際に地域でお住まいの方にアプローチするサービスとして
介護サービス施設・事業所調査より
平成27年調査
第3章【詳細票】第16表(7−1)常勤換算従事者数,地域密着型サービスの種類、都道府県−指定都市・中核市(再掲)、職種(常勤−非常勤)別(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)
第2章【詳細票】第 7表(11−X)常勤換算従事者数,居宅サービスの種類、都道府県−指定都市・中核市(再掲)、職種(常勤−非常勤)別
これらの数を生産年齢人口にそのままプラスして計算すると
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係数を変えたほうがより実態に近づくとは思うのですが同時に考えるにはややこしくなっていくので、単純に足しています
たとえば、私が住む地域では住民運動会があるので地域の方と顔の見える関係になれる地域です

意外と都市部のほうが深刻な状況かもしれません。
無論地方の方は移動手段の話など、代替手段をサービスで補えないケースが多いので問題は多いのですが

4.シビックテックと互助

地域包括ケアにおいては住民同士による助け合いがポイントとなります。
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地域と医療の統合に資する 情報活用の考え方 −不足の観点からみる医療2.10− より)
お互い様の世界なのですがプロフェッショナルな世界と異なる価値観をもたらします。
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地域包括と医療の妙な関係−不足の観点からみる医療2.20− より)
納得する世界に必要不可欠なものと思っています。
さて、オープンデータの世界も同様に住民同士が助け合いながら生活環境をよりよくしていく取り組みがあります
https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2016_1127.html
ここでは「共助」というキーワードが出てきます。互助と共助の枠組みは私が災害医療(看護)の分野に関わった時に出てきた用語なのですが、地域包括ケアに関しては異なる概念になっています
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地域と医療の統合に資する 情報活用の考え方 −不足の観点からみる医療2.10− 資料未掲載スライド)
受講している皆さんは保健医療にも情報にも強い人々ですから、プロとしては当然のこと地域住民としての活躍も期待されています

終わりに

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地域包括ケアシステムにおいて国は「地域性」の答えをここに見ているような気がします
ただデファクトスタンダードはプロが提供したものを市場(利用者)で評価していく方式
互助(共助)が入り込んでいる地域包括ケアやオープンデータの世界においては提供者と利用者が混在している状態ですから、持続可能性を保持するにはベースの部分は地域を治めている側が決めていく(意思表示する)必要があると思っています