奈良県立医科大学附属病院 医療管理/医療情報/医療統計2022
(HIM合格友の会)

試験について

診療情報管理士の試験に合格してください.お願いします.
あくまでも試験対策なのでご不明な点,興味を持ち掘り下げたい方は関連するリンク先などご覧ください

参考資料

診療情報管理Ⅲ(青本)初版(2020.7)

診療情報管理に関する自己紹介

本学に着任する前は,診療情報管理士を養成する大学にいました.
大学の養成校の申請からカリキュラムの変更,そして学生を合格してもらうための環境整備に取り組んでいました.

当時の勉強方法ですが,私がひたすら教科書を読みながら,そこから質問を出して学生が答えていく格好で行っていました.
5人~8人ぐらいのグループに順番に教科書読みながら問題を作って当てていました.(学生は答えるときは本をみません)
概ね6月の終わりぐらいから始めていたのですが,最初の頃は既に勉強している方は時々答えを言えましたが,大半の方は分からない
時とともに少しづつ答えが当たるようになっていく格好でした.

それがどう役立ったのかはわかりませんが,ともかく多くの学生が合格してくれました.最後の追い込みで一気に花開き合格した学生もいました.
そのような学生は地道に取り組んでくれたことと,自分の特長をどのように活用したらよいのか気が付いてから一気に成長したように思います

以上の経験をふまえると,合格への近道はテキストを読み込み理解することだと思います.
ですので,本資料はポイントの整理とテキストでは行間に含まれている部分などを補足したものになります.

当時この部分に対応していた授業のボリュームですが
1-医療管理 90分×30回
2-医療情報 (他の先生が担当)90分×15回
3-記述統計/病院統計 90分×15回(統計)90分×15回(統計演習) 
4-推測統計/研究
という感じでした.どう考えても大変と思いますので
(90分×75回=112時間30分 → 60分×3回=3時間 ) こちらのページを見ながら教科書読んでわからない所がありましたらご連絡ください.対応します

メニュー

1-医療管理

2-医療情報

3-記述統計/病院統計

4-推測統計/研究

1-医療管理


医療資源

4つの資源からなる
setonet20160521-53.png(163855 byte)
地域と医療の統合に資する 情報活用の考え方 -不足の観点からみる医療2.10- より)

物的資源

医療施設(医療法)病院減少診療所増加,医薬品医療機器(薬機法)3分類(医薬品も医療機器も)

人的資源

医療法と資格法,業務独占名称独占,医師(医師法)診療録,薬剤師(薬剤師法)処方箋,保健師助産師看護師(保助看法),救急救命士 気管内挿管,臨床検査技師 衛生検査技師,理学療法士 物理的手段 作業療法 応用社会的能力,視能訓練士 幼少時必要,言語聴覚士 嚥下人工内耳,臨床工学技士 生命維持,技師装具士 製作適合,歯科衛生士 歯科診療補助,介護福祉士(社会福祉及び介護福祉法)介護及び介護指導,社会福祉士(社会福祉及び介護福祉法)相談連絡調整,精神保健福祉士(精神保健福祉法)相談訓練援助,調理師 届出要,公認心理士 国家資格

財的資源

医療保険制度,診療報酬制度,医業収入と医業外収入,非営利

情報資源

診療記録

医療制度

医療保険制度

国民皆保険制度(1961に実現)
職域(被用者),全国健康保険協会管掌(協会けんぽ),組合管掌健康保険協会管掌,船員保険,共済(公務員,教職員)
国民健康,市町村単位が中心,国民健康保険組合(医院医師など)
後期高齢者,75歳以上
労災保険,労働者以外は対象外
<参考>奈良県保険者協議会とは(奈良県)
https://www.pref.nara.jp/59245.htm

公費負担

感染症法・・・結核,I類
生活保護法・・・医療扶助
<参考>生活保護制度(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html
児童福祉法,母子保健法,戦争関連の法律に基づくもの
法律に基づくもの以外に予算的措置によるもの(特定疾患治療研究事業)

医療法

自由開業医制度,病院診療所の定義,違い,特定機能病院,地域医療支援病院

国民医療費

国民皆保険制度・・・アメリカはメディケア(高齢者等),メディケイド(低所得者層)のみ
医療費増加・・・需要増加と供給潤沢,医療技術の進歩

医療の需要と供給

年少人口の減少 老年人口の増加
年齢産区分(年少人口15歳未満)生産年齢人口(15歳以上65歳未満)老年人口(65歳以上) 生活習慣病の急増,感染症の減少
平均在院日数の短縮化
顕在需要・・実際に医療を利用している(受療行動)
潜在需要・・健康状態などから推定

地域医療

一次医療(プライマリケア)二次医療(入院医療)三次医療(特定機能病院など)
医療計画(医療法に定められている)は都道府県が策定.5年以内に再検討
5疾病5事業,基準病床数,医療圏の設定(二次三次)

医療計画と医療法

医療法(1948)
第一次改正(1986)・・医療計画
第二次改正(1992)・・特定機能病院(厚生労働大臣の承認),療養型病床群,院内掲示など情報提供
第三次改正(1998)・・地域医療支援病院(都道府県知事の承認) 施設間連携
第四次改正(2000)・・医師臨床研修必修化
第五次改正(2006)・・医療機能分化連携 地域連携パス,医療情報の公表,医療安全支援センター
第六次改正(2014)・・医師確保,病床機能報告制度,在宅医療介護,チーム医療
医療計画における病床種別
一般病床,療養病床,精神病床,感染症病床,結核病床

社会保障保健福祉法制度

社会福祉六法・・・生活保護法+児童福祉法+身体障害者福祉法+精神薄弱者福祉法+老人福祉法+母子福祉法
社会福祉三法(1940年代制定)残りの三法は1960年代
社会福祉士および介護福祉法はその後1987年
介護保険法
2000年施行・・・65歳以上対象40歳以上の国民から徴収
介護度 要支援2段階 要介護度5段階

患者の権利(個人情報保護)

ジュネーブ宣言(1947)医の倫理
ヘルシンキ宣言(1964)(教科書は誤植)研究-人体実験の禁止,被験者の権利
リスボン宣言(1981)患者の権利
個人情報保護法の・・・OECD8原則

病院の経営管理

プロセス

組織はプロセスの集合体
プロセスは投入された資源に付加価値を付けた成果にする経過のこと
マネジメント・・・PDCAサイクル
Plan・・計画
Do・・実施
Check・・点検
Action・・見直し

PDCAサイクルと関連するところでは事業継続マネジメント(BCM)がある.
BCP(Business Continuity Plan)の策定・・・計画
BCMの運営・・・計画を組織内に浸透させるか
効果検証継続的改善・・・維持管理
ビジネスインパクト分析・・・事業継続にあたってのボトルネックを特定,対策検討実施

組織と機能

組織の成立・・・共通の目的,協働意思,コミュニケーション
組織分類
ライン型・・・上下の関係で命令報告.特定の能力を有する専門家を活用できない
ファンクショナル型・・・仕事内容により責任と権限が異なる.未熟な人も有効に.命令の調整が困難
ライン・スタッフ型・・・ライン型にスタッフの援助が入る形.指示が混同して責任不明になる(病院はコレ)

管理と組織

病院管理の組織構成について
医師・・・・診療活動は多様/流動的 自律的活動が求められる 組織への帰属意識は他職種よりも低くなる傾向(→医局の話)権限多く責任も重い
看護師・・・診療の補助(医師の指示に基づく)+療養上の世話(ラインでの業務)
医療技術職・専門性が強い
<参考>医学部医学科に入学された学生や保護者の方が戸惑うかもしれないこと(2022年度版)
https://medbb.hatenablog.com/entry/2022/04/09/000000
2)将来に関して医学生の認識の怪しそうな部分(キャリア形成) に医局の話を書いております.必要に応じてご覧ください

医療管理

1)診療の質の確保
2)適切な看護機能の保持
3)アメニティの確保

医師(診療部門)

病院管理者は臨床研修を修了した医師であることが規定されている
病院開設者はそのような規定はない
医師国家試験合格→医籍登録→保険医登録 という流れ
診療責任区分
主治医・・・全責任を負う医師
受け用い及び担当医・・・主治医の指導助言等を受け代行する医師
診療記録
医療法や医師法により規定
同僚評価(peer review)や院内自己審査(medical audit)を行うシステムが必要だが・・・

看護部門

診療業務と看護業務は 医師→看護師→患者と昔は理解されていたが今は違います
1看護単位当たりの病床数20床~50床
看護記録
診療報酬上・・入院基本料
医療法による病院の施設基準
専門看護師など
1)専門看護師
  日本看護協会 看護系大学院修士課程修了+所定の単位
2)認定看護師
  実務研修(5年以上)
3)認定看護管理者
  本は古い内容(新しくなったため)
<参考>専門看護師・認定看護師・認定看護管理者(日本看護協会)
https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/
4)特定行為に係る看護師
  手順書により一定の診療補助が医師,歯科医師の判断を待たずに実施できる
5)外来看護
  医療技術の行動化により外来部門で継続治療や管理が必要

薬剤部門

服薬指導,薬剤調整,DI業務,処方調剤,監査,薬剤管理,薬剤供給,病棟薬剤管理

臨床検査部門

検体検査(対象は血液尿など),生理機能検査(患者さん自身を検査)
採血および検体採取行為が行えるようになった(5項目)

放射線部門/画損診療部門

撮影部門(単純,造影,CT)治療部門,核医学診断部門(RI,シンチレーションカメラ)
照射録(照射記録)の作成と保管が義務
造影剤の血管内投与に関する業務が追加
Ai(死亡時画像診断)・・・ラジエーションハウス参照
<参考>美しい少年の死…Ai=死亡時画像診断を駆使し解明した死の真相とは?(Muscat フジテレビ)
https://www.fujitv.co.jp/muscat/20195220.html
MRIについては放射線を用いないが放射線部門所属となっている場合が多い.超音波画像検査も同様で私が当時勤務していた部門では臨床検査技師も診療放射線技師も担当していた.以前お世話になっていた病院の院長先生のお話だとどちらが優れているのかということは無いもののアプローチが違うような話を聞いている

リハビリテーション部門

理学療法室・・PTによる身体機能回復維持訓練
日常生活動作訓練室・・ADL回復,在宅復帰支援
作業療法室・・OTによる社会復帰適用性の向上
言語療法室・・・STによる発話,摂食嚥下機能の訓練
心理療法室・・・CPによる心理検査,心理療法

中央手術部門

麻酔科と深い関連
日帰り手術,短期入院手術が多くなる傾向

医療材料部門

中央滅菌材料室・・看護部管轄,ディスポーザブル(使い捨て)が感染の観点から多くなっているが・・・
医療消耗品補給室・・用度係 物品は定数管理
医療・看護機材管理室・・病棟師長による病棟単位→臨床工学技士による中央管理

栄養部門

給食サービス・・一般食(常食と軟食と流動食)と特別食(治療食と特別食)管理栄養士,栄養士による管理
栄養指導・食事指導・・・NST,在宅患者への訪問も.栄養指導依頼票は診療記録となる

医療社会事業部門

病気に起因する経済的,社会的に困難な状況の解決
MSW・・・国家資格ではないがPSWは国家資格

地域医療連携部門

診療所,病院からの紹介患者の受け入れ
紹介患者の診療結果の紹介元との共有
医療機器の共同利用
病診連携 病病連携 地域連携パス

医療保険の給付

給付の種類

現物給付・・・医療機関の診察など
現金給付・・・出産育児一時金など
入院時食事療養費・入院時生活療養費・・・在宅医療と介護の観点からの公平性

保険適用外診療

美容目的(日常生活に支障が無い状態)
健康診断人間ドック
予防接種
正常妊娠・分娩

自由診療

保険適用となるケースでも
保険の資格を喪失
闘争泥酔や不行跡による事故
故意の犯罪行為
少年院,刑事施設
療養の指示に従わない
不正行為により保険給付を受けた場合

いわゆる混合診療

原則禁止なので全額自己負担となるが保険外併用療養制度→評価療養,選定療養,患者申出療養

診療報酬制度

診療報酬点数表

4種類-医科,診断群分類(DPC),歯科,調剤(保険薬局)

医療費の仕組み

現物給付
被保険者 ←(診療)← 保険医療機関 →(請求)→ 審査支払期間 →(請求)→ 保険者
保険者 →(支払い)→ 審査支払期間 →(支払い)→ 保険医療機関
現金給付
保険者 ←(請求)← 被保険者 ←(診療)← 保険医療機関
保険者 →(支払い)→ 被保険者
但し出産一時金に関しては直接支払制度があるので下記参照
<参考>出産育児一時金 直接支払制度について(クボタ健康保険組合)
https://www.kenpo.gr.jp/kubota/contents/sikumi/kyufu/syussan/tyokusetu.html

診療報酬の請求

診療報酬明細書(レセプト)

診療録に記載されていないものは記載されていない
絵印象録に記載されていても記載されない場合がある

診療録記載

1)外来は都度,入院は毎日
2)修正は二重線,修正液は用いない
3)傷病名は主治医がつける

診療録の保存

5年

保険者番号

法別番号(2)+都道府県番号(2)+保険者番号(3)+検証番号(1)
国民健康保険のみ法別番号は存在しない為6桁.それ以外の社会保険は8桁

公費番号

法別番号(2)+都道府県番号(2)+実施期間番号(3)+検証番号(1)

診療識別コード番号

一通り目を通したほうが良いかなと

診療報酬の単価

1点=10円が基本

診療報酬明細書関連

診療した翌月10日まで
請求権の時効は診療した翌月1日から5年
査定・・減点または増点
返戻・・記載不備疑義などの場合
支払い方式・・・出来高払いと包括支払い(DPC/PDPS)
<参考>保険者番号、公費負担者番号、 公費負担医療の受給者番号並びに医療機関コード及 び薬局コード設定要領(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/topics/2008/03/dl/tp0305-1az_0004.pdf
<参考>医療機関関係者の方へ(神戸市)(公費負担者番号一覧のPDFにリンクしています)
https://www.city.kobe.lg.jp/a52670/20220719.html
<参考>県単位の診療報酬は大いに試す価値あり(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO31525820Y8A600C1EA1000/

診断群分類

ケースミックス区分

ケースミックス・・・多様な患者さんが混在 → 傷病名診療行為などで分類してグループ化する
QC活動の一環・・・医療サービスの評価を目的 → 支払いに利用
米国ではDRG/PPS(入院一件あたり)
  日本ではDPC/PDPS(入院一日あたり)
DRG≠DPC

DPC

3層構造:医療資源を最も投入(ICD-10) → 処置・手術(J,Kコード) → 合併症など
DPC対象外
入院後24時間以内に死亡
生後1週間以内に死亡
臓器移植患者
評価療養
回リハなどの特定入院料算定対象
診断群分類番号
14桁
傷病名(MDC)(2)+傷病名(細分類)(4)+X(使用しない)(1)+年齢出生児体重(1)手術処置(4)+副傷病名(1)重症度等(1) 下線部は該当なしの場合はXが入る
定額点数(一日あたり)
医療機関から提出されたデータを基に点数を決定
入院日数が進むと点数が下がるシステム・・・・平均在院日数で退院すると一回の入院に投入する医療資源の平均的な投入量になる
入院期間Ⅰ・・・在院日数の25%タイル値
入院期間Ⅱ・・・平均在院日数
入院期間Ⅲ・・・平均在院日数+標準偏差の2倍(以上の30の倍数)
25%タイル値やら標準偏差は統計のところで改めて
包括評価部分と出来高評価
Σ(DPC別一日あたり点数)×医療機関別係数(基礎係数,機能評価係数Ⅰ,Ⅱ,激変緩和係数)

介護保険制度

自立支援,利用者本位,社会保険方式
保険者は市区町村
被保険者は45歳以上 65歳以上は第一号被保険者.
要介護認定を受けてサービス利用

医療安全

不確定要素を含む医療において,関係する人々が過誤の有無によらず医療事故が発生しない様に,また発生した場合でも影響が及ばないようにする取り組み
医療安全については「医療の安全の確保」について医療法第6条にて規定されている

リスクマネジメント

参考文献を基に考え以下のように整理しました.
リスク・・・損害が発生する恐れのある事象
ペリル・・・損害が発生する事象(=事故)
ハザード・・事象が発生し損害に至る要因
<参考>田村 祐一郎,リスクをめぐる基本用語について,日本リスク研究学会2009年19巻4号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sraj/19/4/19_4_4_1/_article/-char/ja/

想定されるリスク例

医療機関レベルで捉えるべきものから,臨床におけるものまで様々
自然災害
地震・・・国立循環器病研究センターの件
<参考>国立循環器病センター混乱 入院患者40人を他院へ搬送(朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/ASL6L5D13L6LPLBJ009.html
ヒューマンエラー
1)知識不足などに起因する過失
2)確認不足などに起因する過失
3)人間的特性に起因する過失
  a)生理的身体的特性
  b)認知的特性
  c)集団の心理的特性
環境によるもの
1)予期しない機械の故障
2)ルールの間違い
分類の部分は整理していますので,テキストとは異なります
フェイルセーフとフールプルーフ
1)フールプルーフ
フール(ばか者)でも安全にという思想に基づく仕組み
車でいうとABS(事が起こらないように)
2)フェイルセーフ フェイル(壊れた,しくじった)としても安全という思想に基づく仕組み
車でいうとエアバッグ(事が起こってもなんとか)

医療事故

医療事故(引用資料より)

医療に関わる場所で、医療の全過程において発生するすべての人身事故で、以下の場合を含む。なお、医療従事者の過誤、過失の有無を問わない。
ア 死亡、生命の危険、病状の悪化等の身体的被害及び苦痛、不安等の精神的被害が生じた場合。
イ 患者が廊下で転倒し、負傷した事例のように、医療行為とは直接関係しない場合。
ウ 患者についてだけでなく、注射針の誤刺のように、医療従事者に被害が生じた場合。

医療過誤(引用資料より)

医療事故の一類型であって、医療従事者が、医療の遂行において、医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為。
<引用資料>リスクマネージメントマニュアル作成指針(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/sisin/tp1102-1_12.html

合併症

①ある疾患により他の疾患が引き起こされた状態②ある検査,手術により疾患が引き起こされた状態
<参考>合併症(がっぺいしょう)-「病院の言葉」を分かりやすくする提案(国立国語研究所)
https://www2.ninjal.ac.jp/byoin/teian/ruikeibetu/teiango/teiango-ruikei-b/gappeisyo.html

有害事象

医療行為により引き起こされた障害や合併症により至った以下の事象.但し過失の有無は関係ない
1)患者の死亡が早まる
2)障害が残る
3)新たに入院が生じる
4)入院期間の延長
5)予定外の濃厚な処置や治療

医療事故対策

ヒヤリハット・・・インシデント・・・事故には至らないがよろしくない状態

ハインリッヒの法則

インシデント300件に対して事故(アクシデント)が30件.そのうちの1件は重大事故

医事紛争

医療提供側と受療側の間で起こるもめごと

訴訟

医療提供側の過失(注意義務違反)の有無が争点(過失なのか不可抗力なのか)

医療従事者の義務

予見義務.回避義務
予見可能性があるものに関して予見義務が
回避可能性があるものに関して回避義務が生じる
予見されるも不可避(医療提供と危険回避が相反)
患者の承認意思
インフォームドコンセントを受けた上で医療を選択決定する権利
(パターナリズムは医師が患者の便益を考え方針を決定する)
不足の場合説明義務違反
応召義務
正当な理由が無い場合診療を拒否できない
善管義務
準委任契約→行為の実施に関する契約で結果を約束した契約ではない
<参考>結果回避義務について~医療事故と交通事故の違い~(日経メディカル)
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/opinion/mric/200810/508099.html

医療の質

日本では医療の提供量を重視した政策(量的充足) → 質的向上

Donabedianの質の評価

構造
組織,施設等(人的資源,物的資源)
過程
診療内容
内部審査や同僚評価(peer review)
診療記録・・・POMR
クリニカルパス
根拠に基づいた医療(EBM)
成果
臨床評価指標(CI)治療成績,患者満足度
医療の質だけではなく,医療安全,医療提供サービスの質も反映

医療の質の評価と公表

病院機能評価
日本医療機能評価機構
書面審査とサーベイヤーによる訪問審査
医療情報提供制度(医療情報ネット)
第5次医療法改正(2006年)により導入
医療機関が基本情報や診療実績など報告
<参考>医療機能情報提供制度(医療情報ネット)について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/index.html
病床機能報告制度
2014年医療介護総合確保推進法による医療法改正に基づき開始
病棟単位で医療機関が報告
高度急性期,急性期,回復期,慢性期の区分
病院情報の公表
2017年度から実施.DPC/PDPS機能評価係数Ⅱに加点
<参考>令和3年度 奈良県立医科大学附属 病院指標(奈良県立医科大学附属病院)
https://www.naramed-u.ac.jp/~byoinshihyo/index_R04.html

診療報酬請求に係るデータの活用

DPC

DPC導入の影響評価に係る調査
<参考>DPC導入の影響評価に関する調査:集計結果(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049343.html
診療支払いのツールだけではなく施設間比較,マネジメントへの活用

NDB

レセプト情報特定健診等データ
医療費適正化以外に広く研究に活用されている
保険者によらず収集(→国保データベース(KDB))

オーダーデータ

指示/予定データ 1)変更の場合反映されている?
2)実施した?

医事会計データ

診療報酬請求用のデータ
1)算定出来ない診療行為は記録されない
2)レセプト提出前のデータは未完成状態かも
3)院外処方の場合は

日数に関するあれこれ

在院患者数・・・24時現在の患者数
取扱患者数・・・24時現在の患者数+当日退院患者数
診療情報管理・・単位は1入院で日数算出
医事会計・・月単位のため,複数月の場合は積算して日数算出

地域連携型マーケティング

外部環境分析

自地域:公的に発表されているデータの活用
社会:厚生労働省の検討動向

内部環境分析

内部のデータ(経営 医療実績)を利用
比較のために外部の医療機関のデータと比較.外部アンケートも

ポジショニング

上記の分析に基づき,診療県における自院の役割を定める

前方連携

より高次な医療機関へ繋ぐこと
紹介率の向上→診療報酬加算

後方連携

急性期病院の転院の連携
在院日数の短縮→(DPC/PDPS)1日当たりの診療報酬額が高くなる

2-医療情報


情報とは

知らせ
データを意味づけすると情報
日本語はドイツ語の「Nachricht」を「情報」訳したところからスタート
<参考>第1回 情報学(Ⅰ)-情報とは(奈良県立医科大学 医療情報学2022)
https://medbb.net/education/nmumedinfo2022/#1

医療情報の種類

診療の過程で発生する医療情報

生体情報
機能的病態情報
形態的病態情報・・・画像情報
生理機能情報・・・臓器の活動
検体検査情報・・・血液や尿など
症候的情報
主観的病態情報・・主訴
観察的病態情報・・所見
判断的情報
診断情報・・・診断名,医師の思考を示す
治療・看護情報・・・意思決定の結果,実施記録
予後情報・・・病状の長期予測,退院後記録

診療情報の形態的分類

コード・・・患者ID,ICD-10,Kコード
数値・・・身長体重年齢血圧
音情報・・・心音,呼吸音
テキスト・・主訴,身体所見,治療評価
図形・・・シェーマ
波形・・・心電図,脳波
画像・・・X線写真, CT
動画・・・内視鏡,シネアンギオ,手術の様子

診療情報の特性

3次元・・・患者軸,項目軸,時間軸
時系列・・・時間軸での整理が有用
欠損値が多い・・・患者さんはばらばら
あいまい・・・表記ゆれ
表現形態・・・診療情報の形態的分類 の通り 多岐
可変長・・・表現形態の事を考えると当然.扱いにくい
個人情報・・・機微な情報(sensitive)漏洩時の損害賠償を考えても細心の注意の重要性
medicalSD20041124-21.png(35063 byte)
medicalSD20041124-22.png(23055 byte)
個人情報の保護に関する病院の義務と責任~個人情報保護法の施行へ向けて~ より)

診療情報の利用

一次

本来の目的・・・診療,患者家族への説明,医療従事者間共有,診療報酬請求

二次

診療に関連しない・・・経営管理,研究,教育,公衆衛生

診療情報の電子化

電子保存の3基準

真正性 見読性 保存性

情報保存する条件

3基準+留意事項(運用管理規定他)
技術的な部分は,各施設自己責任で決定

自己責任について

説明責任 管理責任 結果責任

医療の情報化と診療報酬

2006年(時限的)電子化加算・・・レセプト電算化,オンライン請求
2016年 検査・画像情報提供料,電子的診療情報評価料

施設内の情報

用語やら

病院情報システム:HIS(Hospital Information System)
医薬品情報:DI
医用画像情報システム:PACS DICOM規格 画像情報は非可逆(圧縮)フォーマットは使わない
医事会計システム:レセコン
RIS:放射線部門システム-(LIS:臨床検査情報システム)
EMR:電子カルテ HL-7 EHR:地域医療連携システム SS-MIX2 PHR:パーソナルヘルスレコード

診療情報管理部門のシステム

「もの」としての診療録の管理 → 「もの」に依存しない情報のデジタル化により「もの」としての管理が不要に
但し情報そのものは変わるわけでも無い → チェックやコーディング

オーダーエントリーシステム

処方箋や伝票を電子化(電子伝票システム 世の中のファミレスでも同様)
<参考>オーダリング(ブランドテラス)
https://patent-i.com/tm/pron/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0/

電子カルテシステム(EMR)

医師法(歯科医師法)に規定されている診療録を電子化→電子保存3条件(該当の部分参照のこと)
単に電子化したものではなく,概念が広がっている
電子カルテの普及率 < レセコンの普及率

地域医療情報システム

医療資源が不足する遠隔地における医療をどのように成立させるかの話と,地域完結型医療の成立に必要な施設間の情報共有の話の二つに大別される

遠隔医療システム

<参考>第08回 保健医療情報システム(Ⅳ)-施設を超えた情報システムについて(奈良県立医科大学 医療情報学2022)
https://medbb.net/education/nmumedinfo2020/index.html#8
DtoD
1)テレラジオロジー(放射線科医による読影)(ビデオ)
2)テレパソロジー(病理医による病理診断)術中迅速診断
3)テレサージェリー(他施設の専門医が映像を基にアドバイス)(遠隔地の術者がロボットアームで)

地域医療連携システム(EHR)

遠隔医療の場合は2点間の情報交換になるが,地域医療連携システムは医療機関内で共有している情報を地域単位に拡げていく考え方・・・基盤
システムの課題
1)セキュリティ・・・HPKI・・・電子証明書
<参考>保健医療福祉分野公開鍵基盤 電子認証局のご案内(一般財団法人医療情報システム開発センター(MEDIS))
https://www.medis.or.jp/8_hpki/
2)統一したID
医療施設で管理/発行するIDは他医療施設では役に立たない
名寄せ
3)ヒューマンネットワーク
構築されていないとシステム入れても機能しないわけで

診療情報の二次利用

DWH
データウェアハウス
電子カルテや部門システムなどのデータを収集
注意点 あくまでも二次利用なので一次利用では顕在化しない話が
1)それぞれのシステムにおけるデータの意味付けの違い(カテゴリ)
2)集計/分析時に問題となるエラーデータ
3)データが見当たらない時(欠損値)
分析手法 データマイニング・・・判別分析,主成分分析,クラスタ分析・・・
OLAP・・・DWHのデータを簡単に分析できるシステム(excelでいうピポットテーブル)
<参考>Excel+OLAPでスタートする「身近なBI」(TechTargetジャパン)
https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/0911/27/news01.html
施設レベルを超えたデータベース
1)NDB・・・レセプトと特定健診・保健指導データ(厚生労働省)
2)NCD・・・手術症例データベース(外科系学会)
3)全国がん登録・・・がんに関する情報と(医療機関)死亡情報(市町村)を合わせて管理(国立がん研究センター)
PHR
個人が取得した健康に関連する情報を電子的に記録(お薬手帳,母子手帳)

医療情報の標準化

DICOM

様々な医用機器から出力される画像情報の保存伝送の規格 (上記のPACSも参照)

SS-MIX2

医療機関間の医療情報の交換・共有の規約
病院情報システムからの情報をHL7(施設内の情報システム間の規約)の形式に変換している

情報セキュリティ

機密性 アクセスを許可された人だけアクセスできる
完全性 保有する情報が完全な状態で保持されていること
可用性 必要な時に情報を取り扱うことができること
<参考>情報セキュリティの概念-国民のためのサイバーセキュリティサイト(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/kokumin/business/business_executive_02.html

医療情報システムの安全管理

組織的安全対策

運用管理規定,担当者

物理的安全対策

人・・・入退出管理
物・・・チェーンなど取られない対策

技術的安全対策

認証(IDパスワード,生体認証,2要素以上推奨)
アクセスログ
不正ソフト
ネットワーク侵入対策

人的安全対策

教育
規定の整備
守秘義務契約

情報および機器の持ち出し

規定の整備
暗号化など紛失しても見られないように
台帳管理

3-記述統計/病院統計

記述統計・・・手元にあるデータ自体の状況を示す ⇔ 推測統計・・・手元にあるデータを用いて全体の状況を推定する(世の中は広い)

統計に用いるデータ

基本どのようなデータでも統計処理は出来る
出来ないのは,どのようなデータであっても一つしか存在しない時

データについて

レコード
症例,個体,被験者単位でまとめられたデータの塊.表の場合一行にその症例のすべてのデータを記していたらそれがレコード
変数(変量)
データの項目名のこと
データ
観測値や測定値のこと(数値)
性別など文字の場合もある.
コンピュータ処理するとき,文字だと扱いにくいのでその時は数値に置き換える(→コード変換)
例えば都道府県名であれば 北海道→01 青森県→02 奈良県→29
全国地方公共団体コードの上二桁=都道府県番号
<参考>全国地方公共団体コード(総務省)
https://www.soumu.go.jp/denshijiti/code.html
都道府県番号に順列は存在しないが,順列の存在するもの(松 竹 梅)もある場合はその法則にしたがった番号を振ることがあるので注意
変数(変量)の種類
量的変数・・・連続変数,整数変数・・・小数点の無いデータ=整数変数
質的変数・・・名義変数,順序変数・・・本来名前に順番は無いが,便宜上定めたものもある
量的/質的変数の話を意識しておくと代表値の話や検定手法の話まで理解しやすくなる.
注釈(余裕のある人はお読みください) データの種別については,4つの尺度で進めることが多いのですが,診療情報管理士の教科書は表現型(整数,小数点を含むデータ,文字列などなど)からアプローチしています.
記述統計(1)尺度・度数分布・ヒストグラム - 奈良県立医科大学 保健統計学I2021(医学部看護学科)
https://medbb.net/education/nmuhlthstat12021/#1

統計量

取りまとめたものを「量で」示したもの.質的変数であっても度数(個数,人数など数えるもの)については「量」として示すことが出来る

度数

どのようなデータでも度数を示すことは可能
度数分布表
それぞれのデータ(変量)の数(出現頻度)をまとめたもの
変量が名義尺度の時は多い順(お作法として。但しその他を出すなら一番最後)
順序尺度以降であれば順(名義尺度でも比較のためにお作法を破ることはある)
度数  ・・・出現頻度
相対度数・・・総出現頻度を1(100%)としたときのそのぞれの度数のしめる割合
累積度数・・・上位の変量の度数もあわせた度数
累積相対度数・・・累積度数の相対版

品名 度数 相対度数 累積度数 累積相対度数
いちご 15
みかん
ぶどう
30 1.00 ----- -----
量的変数の場合はその数値だけで度数を積み上げようにもなかなか上手くいかない場合がある.
血圧 163.5mmHg 164.2mmHg 162.5mmHg・・・どれも度数を積み上げられない → 区間を設定する
「A~B」は過去の教科書では「A以上B未満」と読む格好で統一されていたが,現在は読み方を明記することと変わっている
「A以上B以下」とするとどちらの階級にも属してしまう場合がある.
階級 階級値 度数 相対度数 累積度数 累積相対度数
130~140 135
140~150 145
150~160 155
160~170 165
170~180 175
----- -----
<例題>こちらの度数分布表の空欄埋めてください
品名 度数 相対度数 累積度数 累積相対度数
かつ丼 90
カレーライス 0.3 0.75
ラーメン
1.00 ----- -----
度数分布図
質的変数・・・縦棒グラフ
nmuhimstat2021-01.png(3771 byte)
量的変数・・・ヒストグラム
nmuhimstat2021-02.png(3656 byte)
棒の間隔が無いのは値が連続している状態であるが故
普通の棒グラフは棒の長さが度数を示すが,ヒストグラムは棒の面積が度数を示す
「階級の幅を等しくすること」というのは幅が変わると高さが変わる故で,実際にはそのような区間設定はよくある
以下の参考資料に区間幅の異なるヒストグラムについても説明なされているのでよろしければごらんください
ヒストグラムーなるほど統計学園(総務省統計局)
https://www.stat.go.jp/naruhodo/4_graph/shokyu/histogram.html

記述統計量(要約統計量)

代表値と散布度からなる.←駅伝やマラソンの実況中継はこれらを利用しているから状況がわかる
【代表値】平均(Mean)
Averageってexcel関数ありますが,あれ代表値って意味です.
いわゆる割り勘.xbar=1/n(x1+x2+・・・+xn)
欠点:外れ値があると平均値は分布の中心位置を示さない(←それって代表的な値??)
 → 対処法:外れ値を取り除くか中央値を使うか
【代表値】中央値
昇順に並べたときに,真ん中の順番のデータ(変数)の値
データの数が偶数だと真ん中のデータは二つになるのでそれらの平均値
【代表値】最頻値
最も個数が多いデータの値
最頻値は複数存在する場合がある→二峰性
【散布度】範囲
最大値と最小値の差
【散布度】四分位範囲
IQR=第3四分位数(75%点)-第1四分位数(25%点)(参考:中央値=第2四分位数(50%点))
第3四分位数(75%点)の算出方法は数多くありまして・・・
【散布度】標準偏差
範囲を用いた散布度と違い,平均値からのバラツキ(差=偏差)の平均を求めようというもの
ただし偏差の平均をとれば集団内の各々のズレっぷりがわかると思って計算しても → 合計は常に0 故に平均も常に0
そこで偏差を二乗したものの平均を取っている → 分散
標準偏差は分散の正の平方根をとったもの
nmubiostat2016-0302.png(3064 byte)
標準偏差については,教科書やら様々な資料で表現が微妙に異なりますが,先に説明したのが今ある状況を指し示す標準偏差
nではなくn-1で除して計算するものは不偏分散・・・不偏分散より求めた標準偏差(=これを標本標準偏差と記している書物が多い)がこれは推測統計の話
ややこしいのが,標本標準偏差と記載しながらnで除しているものがあったりするので世の中は混乱して当然に思う
推定の所でもコメント書いておきました.
変動係数は標準偏差を平均で除した値(平均値を使ってスケールを揃えることでバラツキ具合を比較するため)
1万円持っているときの10円と100円持っているときの10円の存在感の違い

量的変数が2つ存在するときの関係

変数相関/回帰分析の話

散布図

X軸Y軸に一つの事象や対象を観察して得られた二つのデータを一つの点としてプロット.
点のバラツキ具合を見る
nmuhlthstat1202107-02.png(9572 byte)
第07回FTF 二変量解析 相関係数・回帰直線(奈良県立医科大学 保健統計学I2021) より

相関係数

r・・・-1~1の値をとる
負の相関・・・右肩下がり(一方のデータが増えるともう一方のデータは減る)
正の相関・・・右肩上がり(一方のデータが増えるともう一方のデータも増える)
無相関・・・0に近いほど・・・散布図で示すと互いに関係の無い組み合わせはいろいろあります.(教科書のパターン以外に色々)
相関係数の目安
-1.0 -0.7 -0.4 0 0.4 0.7 1.0
強い相関 中程度の相関 弱い相関 無相関 弱い相関 中程度の相関 強い相関
負の相関 正の相関

交絡因子

コーヒーを飲むと肺がんになる.
というデータが出てくるが・・・コーヒーにも肺がんに影響を及ぼしている因子・・・交絡因子
このケースはタバコ

回帰直線

Y=a+b×X
Y:説明変数
X:予測変数
a:切片
回帰直線はXとYそれぞれの平均の点(Xbar,Ybar)を通る

グラフ(散布図など先に登場しているものもご確認ください)

それぞれの特徴やお作法を記しておきます.

お作法

項目が名義変数(尺度)の場合は度数の多い順に
ただしその他は,どれだけ度数が多くても一番最後
順序変数(尺度)他は度数に関係なく順序に従って記すこと

棒グラフ

度数分布表を図にすると,このグラフになる.
ヒストグラムの場合は,度数を棒の高さではなく面積で示していることに注意(前章該当箇所を確認の事)
項目は左(縦棒グラフ),もしくは上(横棒グラフ)から示す.
度数以外に割合で示す場合もある. 両側棒グラフは,2種類のデータを同時比較するときに有効

円グラフ

・個別の度数の全体に対する割合を円の角度で示したもの
・項目間の比較において特定の項目同士の比較には効果的だが,多項目の比較になるとわかりにくい
nmuhimstat2021-03.png(9590 byte)
nmuhimstat2021-04.png(15866 byte)
・度数の表現には適さない
円の角度と面積と
面積でも割合を示しているのでは?という疑問について
円の面積はπr^2で項目の割合を角度で示しているから,結果的に面積にも比例している
ただし,どのように認識しているかというと,パイの部分の面積を比較していないかと・・・という意味
角度で示しているが,意図せず面積比でも同様な結果となるけど,見る側はそのような見方をしていない・・・ということでどうでしょう

帯グラフ

棒グラフ(積み上げ)の高さを揃えて割合を比較
nmuhimstat2021-05.png(6471 byte)
円グラフと比べて項目が多くても把握しやすい
異なる集団との比較が出来る.特に端の項目

折れ線グラフ

変化の傾向をとらえるのに有効

レーダー図

複数の項目データを二次元にマッピングすることでパターンを作成し,類型化することが出来る
nmuhimstat2021-08.png(27839 byte)
診療情報管理学会の発表の際も以下のようなもの作成していました. 管理士取得されたら学会発表したくなると思うので喜んでサポートします.ご遠慮されずにご相談ください
jhim41-14.png(162309 byte)
検索エンジンのサジェスト機能を用いた病院情報探索行動の分析(第41回日本診療情報管理学会学術大会)より

散布図

二つのデータの関連性を示す. プロットする点の大きさをデータで示せば三つのデータの関連性を示せる(→バブルチャート)

箱ひげ図

nmuhimstat2021-09.png(8898 byte)
箱ひげ図は四分位数(中央値)の世界(正確に言うとパーセンタイルかな)での表現を基本

統計資料

厚生労働省の統計資料

データの傾向
受療者数(推計患者数)は入院は減少,外来は横ばい.ただし65歳以上は増加傾向
受療率は入院外来ともに低下傾向(受療率:推計患者数(一日)を推計人口で割ったものを人口10万人あたりにしたもの(人口10万対))
65歳以上の受療率が低下しているのに受療者数(推計患者数)が増加しているのは,高齢者の方が増加しているから
平均在院日数は低下傾向・・・高齢者ほど在院日数は長くなる傾向

病院で作成する統計指標

平均在院患者数
24時現在の在院患者数を累積したものをその期間の日数で除する
24時現在の在院患者数はレセプトの入院診療日数(=取り扱い患者数)とは異なる.
平均外来患者数
外来患者延べ数をその間の診療日数で除する
外来入院比
高度な医療を提供する医療機関では1.5以下になるように
一日あたりの外来患者数と入院患者数の比
・外来患者数は初診再診など区別せずに
・外来患者数は診療録ベースでカウント(複数診療科受診)
平均在院患者数
在院患者延べ日数を患者数で除する.
1)(退院患者数ベース)厚労省の患者調査 国際比較に用いられる
退院患者延べ日数/退院患者数
2)(在院患者数ベース)厚労省の病院報告の数式
在院患者延べ数/(新入院患者数と退院患者数の平均)
平均病床利用率
在院患者延べ数/病床延べ数
病床は対外的には許可病床,実質は稼働病床数で
病床稼働率とは異なる(→分子が在院患者数+当日退院患者数)
<参考>
病床稼働率(奈良県総合リハビリテーションセンター)
http://www.nara-pho.jp/reha/about/clinical_indicator_7.html
病床回転率
病床回転率=365/平均在院日数(うるう年の時,分子は366で)
・病床利用率が高くても,長期入院患者が多ければ病床回転率は低くなる
・平均在院日数に反比例する
年間退院患者数を病床数で除して求める場合もある(こっちの方が趣旨を理解しやすいかも)
死亡率
死亡患者数を退院患者総数で除したもの
粗死亡率はそのまま計算
精死亡率は入院後48時間未満の死亡数を除いて計算・・・入院以前の状況に関連するとして
新生児死亡率
新生児死亡数を出生数で除する
注)死産児,院外出生の新生児死亡は除く
術後死亡率
術後死亡率=術後死亡数/手術患者数
術後いつまでの期間の死亡数とするのか明確に
剖検率
医学教育・研究を示す評価指標
患者家族の満足度や新態度を示す指標
剖検率=剖検数/死亡患者数
紹介率
紹介・・・他の医療機関での診療が必要になり診療情報提供書をもって受診(例:診療所→病院)
逆紹介・・・紹介とは逆の流れ(例:病院→診療所)
文書により紹介された患者延べ数/初診患者延べ数
救急・小児医療に配慮して計算している(紹介状持参していないケース多)
悪性腫瘍5年生存率
10年を求めるケースもある.
診断日と診断後5年間生存しているかのデータより算出
生存確認・・・予後調査
予後調査では悪性腫瘍による死亡か否か完全な把握が難しい

4-推測統計/研究

推測統計は推定と検定から構成されます
どちらも同じことですが表現が違うという理解で
私が整理するならば
推定は枠内に入ることを祈っている.実態を知りたいから
検定は枠内に入らないことを祈っている.従来と違う説を証明したいから

出てくる用語

母集団

対象とする集団全体の事
母集団全てのデータを取得するのはかなり難しい
全数調査(悉皆調査 センサス)は時間と労力と(お金)必要 → 国勢調査

標本

対象とする集団の一部
全数調査は難しいから一部のデータ(標本)を → 全体を推し量る → 推測統計
取得する際に意図が含まれると実態とかけ離れた推測をしてしまう(作為) ⇔ 無作為

標本サイズ

標本数 サンプルサイズともいう

母○○

母集団における統計量の場合頭に「母」
母平均μ,母分散σ^2,母標準偏差σ

標本○○

標本における統計量の場合頭に「標本」
標本平均Xbar,標本分散V,標本標準偏差S=√V

母〇〇と標本〇〇の整理

母〇〇は全数調査しないと計算できない
標本○○は母集団の推定を目的としたもの故に少し注意が必要
不偏推定量
偏っていない推定量・・・推定は偏らないように
母平均の不偏推定量μ=標本から求めた平均Xbar(μもXbarも同じ式)=標本平均
母分散の不偏推定量≠標本から求めた分散(同じ式で求めると偏った推定量になる)
分散や標準偏差を求める際に偏差を求めますが,標本を用いて計算するとき標本の平均との偏差を求めることになります.
確かに標本平均は母平均の不偏推定量ではあるものの推定しただけのもので一致するわけでもありません
例えば母集団全体の平均が60,抽出した標本(あるクラス)5人の平均点が70点(それぞれ90,80,70,60,50点)だったとしましょう.
母集団の平均との偏差は(30,20,10,0,-10) 標本の平均との偏差は(20,10,0,-10,-20).それぞれの偏差平方和を求めると(900+400+100+0+100)=1500と(400+100+0+100+400)=1000と違う値が出てきます
偏差平方和が小さいと分散も当然小さい値となります・つまり母平均と標本の平均が一致しない限り,標本の平均を用いた分散はどうやっても値が小さくなってしまいます.ということで偏った推定量になってしまいます.
そこで母分散の不偏推定量はこのことを鑑みて偏差平方和をnで除するのではなくn-1で除しています.無論n-1で除する理由もありますが,ここから先は余裕のある方,スカッとしたい方は下記リンク参照ください.
<参考>不偏分散は何故nではなく(n-1)で除するのか(奈良県立医科大学 生物統計学2018)
https://medbb.net/education/nmubiostat2018/index.html#VAR
上の方で標本分散,標本標準偏差がどちらを指しているのかわかりにくいという話をしましたが,以下のように整理しておくと大丈夫かなと思います
このような解釈で(私が思うところ)
結局標本は,母集団を知るために抽出しているという前提に立てば
標本標準偏差は標本から母標準偏差を推定するためのものだから,不偏推定量(不偏分散に基づく標準偏差)であるべきなのでn-1で除する.
(標本分散も同様にn-1で除する) 時々標本そのものの分散や標準偏差を「標本分散」「標本標準偏差」と記述しているものもありますが(要はnで除したもの),それはn数が大きければ値はどちらもほぼ一緒なので問題無いという立ち位置と理解しています
教科書の書きぶりから診療情報管理士には実務的なところを押さえて進めていく格好に思うので,まずはnよりもn-1を使うほうがいいみたい と軽く気に留めていただくぐらいがちょうどよいかなと思います

平均値の推定

orcstat2020-0602.png(17719 byte)
点推定と区間推定があるが点推定は,標本平均を以て母平均を推定すること
点推定の利点は容易に求めることが出来る.欠点は母平均とその推定値がどの程度ズレているものか想像できない

区間推定

点推定の値を中心に幅を持たせる
100%の確率で推定するのは簡単だけど推定しても意味が無い・・・(幅を無限大にすれば100%あたる)
95%信頼区間(20回推定したら19回は当たる(だろう)ような幅)で推定している

確率分布

推測統計で用いる確率分布・・・この分布を用いて95%云々の幅を決めている.
正規分布の欠点を補う格好でt分布がありますが,正規分布のようなものです

正規分布

左右対称の釣鐘状分布
平均値に近いほど出現率が高く遠ざかるに従って低くなる分布(ってことが多ですよね)
同じ事柄を同じ条件で繰り返して平均値をとった時,平均値は繰り返す数が多いほど正規分布になっていくという話→中心極限定理
中心極限定理
標本の大きさが十分であれば母集団の分布によらず標本平均の分布は近似的に正規分布に従う

ということで平均値の推定は標本数が多ければ正規分布でOK.
(無論:身長のように正規分布に従うようなものは値そのものの推定に使っても大丈夫です)
標準正規分布

正規分布は平均値を中心として,その広がり方は「分散(標準偏差)」により変わる.
対象とする集団の平均値が0,標準偏差が1(=分散も1)としたときの分布を標準正規分布という.
その時の平均値をZとしている.標準正規分布ではZ=0
確率分布の曲線下面積は全部で1(百分率で100%)
標準正規分布表
kuswepi2021-01.png(339177 byte)
標準正規分布表のPDF版はコチラから

信頼区間の表記

区間の示し方は平均の場合(Xbar-幅,Xbar+幅)
信頼区間・・・CI(Confidence Interval)

幅の求め方

二つパーツを乗じたもの
1)標本平均を中心に上下47.75%(0.4775)づつ(点の場所は上下それぞれ0.025の点)になる確率を示す係数
2)推定する値のバラツキ具合=標準偏差(値の推定の場合)
              =標準誤差(平均値の推定の場合)
標準偏差と標準誤差
・標準偏差は標本の分布のバラツキ具合を示したもの
・標準誤差は母集団から抽出した標本の平均値のバラツキ具合
SE=σ/√n
2)推定する値のバラツキ・・は値の推定の場合と平均値の推定の場合と分けましたが,値の推定の場合は標本数が1と考えたら同じと思っていただけるかなと思います
標本数1のときの標準誤差 SE=σ/√1 ∴SE=σ
感覚的に,測定値の平均をとるとバラツキ具合は無くなっていくだろうというのは理解できると思いますが何故√n となるかと思います
標準誤差SEはなぜ標準偏差σを√nで除するのか(奈良県立医科大学 生物統計学2018)
https://medbb.net/education/nmubiostat2018/index.html#SE

検定

orcstat2020-0603.png(12754 byte)
二つの仮説(本当に証明したい仮説=H1対立仮説と,H0帰無仮説)を基準とする確率(有意水準α)に基づきいずれかを採択する.
流れは帰無仮説を棄却するかしないか→棄却した場合は対立仮説
H0 μ=0
H1 μ≠0
という感じで検定する人は帰無仮説は世の中的に想定内 対立仮説は想定外 という恰好で帰無仮説を棄却して対立仮説を採択することを祈っている(と思う)
仮説検定を行う理由は,既に仮説があって立証する形をとっているからです.
「後出しじゃんけん」だと偶然出た結果であってもなんでも言えるわけで,本当なの?となってしまいます.
詳しい話は以下の資料を読んでいただけると良いかなと思います.
<参考>研究におけるデータ収集と統計処理について-医の共通科目(奈良県立医科大学大学院医学研究科)
https://medbb.net/education/nmucsmed2022/

検定の流れ

1:帰無仮説H0,対立仮説H1を設定(対立仮説が証明したい説)
2:有意水準を定める()通常5% 0.05)
3:標本より求めたデータから検定統計量を求める(正規分布を使うならZ値)
4:検定統計量からその標本がどの程度の確率でおこる事柄か確率Pを求める(統計表より)
5a:P値が有意水準よりも小さい場合は帰無仮説を棄却し対立仮説を採択(違いがある)
5b:P値が有意水準よりも大きい場合は判定保留(元々の仮説がるので今回証明できなかっただけ.無論何回も実験を行い証明が出来ないと・・・)
有意水準よりも小さい確率の領域を棄却域,有意水準よりも大きい確率の領域を採択域・・・どちらも帰無仮説を基準の名称になっています.
基本は確率(P値と有意水準)で採択域か棄却域か判断するのですが,実際には検定統計量同士で比較するケースの方が多くなるかと思います.
大小関係を整理しておかないとわからなくなるので,確率分布図を思い浮かべていただけたら混乱しないと思います

良く使う確率分布やら求める方法

「自由度」νが出てきますが,以下考え方
標本の中で自由に振る舞うことが許されている値の数
例えば標本から平均を求めたとき統計量が母数の推定値となると、自由に振る舞えない値が出てくる(つじつま合わせ)

t分布

正規分布による検定(推定)は小標本だとイマイチ
ゴセットさんがt分布を提示
正規分布・・・分散(標準偏差が必要)・・・t分布(標本の自由度が必要) nmuhims2022-01.png(169858 byte)
t分布のPDF版はコチラから
酒井 弘憲,ギネスビールと統計家ペンネーム スチューデント,ファルマシア51巻12号,2015
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/51/12/51_1168/_article/-char/ja

カイ二乗分布

母分散を推定できる確率分布
χ=ΣZ

カイ二乗分布表

t分布と同じく自由度により確率分布は変化する
カイ二乗分布(ν=1)の時のそれぞれの上側確率に相当する正規分布の確率(両側5%(片側2.5%ずつ)は全て上側に集約されてしまう
χ=((X-μ)/σ)
χ0.05=((1.96-0)/1)
例)標準正規分布で有意水準両側5%の場合の境界値はz=1.96.カイ二乗分布表より有意水準上側5%の時のカイ二乗値=3.84
nmuhims2022-02.png(176367 byte)
カイ二乗分布のPDF版はコチラから

Fisherの直接確率法

カイ二乗検定をするにも期待値が低い場合
直接確率を求めた例は以下
nmubiostat2022-0701.png(66291 byte)

良く使う確率分布による検定の種類

検定の流れは上に述べた通りでどのような確率分布を用いるのかの違いに惑わされないように

(平均値の差)t検定

正規分布を用いた検定と同じく母集団の平均値と標本から求めた平均値を比較して同一と見做してよいのか(帰無仮説)同一とは見なせないのか(対立仮説)
ここでは二つの標本を比較する話で,それぞれの標本の平均の差をとると一緒であれば0が期待される.つまり2群のの差が0と同じようなものとみなしてよいのかダメなのか
対応の無い2群(被験者を性別に分けそれぞれ50m走のタイムを測定し,性別による違いがあるか)
対応のある2群(被験者全員に50m走を走ってもらい,ある栄養剤を飲んでもらった後でもう一回被験者全員に50m走 栄養剤によりタイムが変わったのかどうか)
(対応の無い2群)Studentのt検定
対応が無いのでそれぞれの群の平均を求め,その差が0かどうか
それぞれの群の(母)分散が等しいと仮定して計算したもの
(手計算できるような式)
(対応の無い2群)Welchのt検定
対応が無いのでそれぞれの群の平均を求め,その差が0かどうか
それぞれの群の(母)分散が等しくないと仮定して計算したもの
(手計算は少し困難)
(対応のある2群)対応のあるt検定
paired-t検定と言われたりする
<ビフォーアフターの変化を被験者単位で求めることが出来る.(∴分散の合成を考えなくてよい)

独立性の検定(カイ二乗分布)

度数の比較(名義尺度でもOK)
被験者からコーヒーおよび煙草に関してアンケートをとり,コーヒーとタバコに関連がある(対立仮説)か無い(帰無仮説)か調べる
事象の起こる確率は実際に観測された度数を基に算出して全体の度数を乗じることで期待値(度数)とする.
nmuhlthstat1202106-02.png(3628 byte)
期待値は周辺度数より求める格好
nmuhlthstat1202106-03.png(3808 byte)
喫煙あり×コーヒー好きの期待値=100×90/160=56.25 以降も同様に全ての組み合わせで期待値を求める
喫煙あり×コーヒー好きのカイ二乗値=(75-56.25)/56.25=6.25 以降も同様に求め足し合わせる
χ=6.25+10.42+8.04+13.39=38.10
この集計表の自由度は1・・・χ0.05(1)=3.84
帰無仮説を棄却し対立仮説を採択.つまり関連がある.
Fisherの正確検定
上記のFisherの直接確率法を参照

臨床研究

研究といえば実験的なイメージですが,臨床の場合は被験者の方の人生に影響を与える可能性があるのでその点理解したうえで

臨床試験

患者に対して新しい薬剤や手法により治療する形式.標準治療と比較する格好で評価
研究計画書の事.被験者の条件や治療法,試験の中止や効果判定などについて記載
無作為割り付けとはランダムに標準治療と対象とする治療法を振り分け
ただし年齢や性別など治療結果に関連する因子が分かっている場合は因子毎(層別化)にランダムに振り分けることもある
無作為比較試験とは何でしょうか?-がんナビ(日経BP)
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/series/kenkyu/201903/560107.html

観察研究

臨床研究と異なり試験的な介入は無い
1)研究を目的としていないのでデータが欠損していることがある(診療を目的としているので)
2)臨床試験のように層別化出来ないので治療に関連する因子の影響がでてくる場合がある
3)対象とする施設によって重症度など異なるので解釈に注意が必要(一般化)

コホート研究(Cohort study)

対象に曝露している人々と非曝露群を設定、追跡調査していくスタイル
時間の流れに従ってデータが取得される.

症例対照研究(Case-control study)

ある状態(例えば病気に罹患している)群と、罹患していない群を設定、時間を遡って調査していくスタイル

評価指標について

相対危険について

説明用データ
疾病発症 疾病無
曝露有 A B A+B
曝露無 C D C+D
A+C B+D
リスク比
Risk Ratio(RR)
曝露(介入)の有る時と無の時の危険を示す指標の比
危険を示す指標には罹患率やら有病率やら死亡率やら

A~D:疾病発生頻度(頻度以外に罹患率やら有病率・・・)

曝露有群の発症リスク=A/(A+B)
曝露無群の発症リスク=C/(C+D)
リスク比=A/(A+B)/C/(C+D)
もし、発生頻度が低ければA+B≒B C+D≒D
 リスク比≒A/B/C/D=AD/BC

オッズ比
Odds Ratio(OR)
危険な事象が起きた場合と起きなかった場合の指標の比(=オッズ)について曝露(介入)の有無毎に求め比をとったもの

発症有群の曝露オッズ=A/C
発症無群の曝露オッズ=B/D
オッズ比=A/C/B/D
    =AD/BC
上記のように発症頻度が低ければオッズ比とリスク比の近似値となる

例題
1)適切な相対危険を算出せよ

以下はコホート研究のデータである
不整脈あり 不整脈なし
曝露群 100 1900 2000
非曝露群 50 1950 2000
150 3850 4000
2)症例対照研究の場合,相対危険をオッズ比で算出しなくてはならない理由を簡潔に述べよ
参考)もし1)のデータがコホート研究ではなく症例対照研究だとしたならば以下のようなデータになるかなと
不整脈あり 不整脈なし
曝露歴あり 50 30 80
曝露歴なし 50 70 120
100 100 200

生存時間の分析(生存率とか死亡率とか)

ある期間を定めて発症した/しないを集計し評価するのではなく,発症するまでの経過を追い時間を含めた評価を行う方法
用語
フォローアップ・・・継続的に経過を観察すること
観察打切り・・・生存中(罹患することなく)観察を終了・・・①あらかじめ設定した観察終了日に到達②転居などで観察できなくなった
転帰・・・予後の事 死亡(罹患)もしくは生存
難解語 アウトカム、転帰、予後、主要アウトカム、主要エンドポイント-医学研究成果をわかりやすく発信する手引きの提案(東京大学未来ビジョン研究センタ-)
https://ez2understand.ifi.u-tokyo.ac.jp/terms/terms_10/#:~:text=%E・・・(略)
カプランマイヤー法
イベント発生時点で発生割合を都度計算しその割合(比率)を更新していく方法
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nmuhims2022-04.png(363344 byte)
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人年法をご存じの方は混乱しそうなので下記参照
青木伸雄,人年法の計算と利用方法,日本循環器管理研究協議会雑誌,1991 年 26 巻 1 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcdp1974/26/1/26_1_64/_article/-char/ja/
カプランマイヤーの話を深めたい方は以下
第14回 生存時間分析(奈良県立医科大学 生物統計学2022)
https://medbb.net/education/nmubiostat2022/#14