奈良県の医療を取り巻く状況について
平成30年度地域医療研究会 講演会
《主催》奈良県立医科大学地域医療学講座
(会期)2019年3月13日 (開催場所)奈良県橿原市 奈良県立医科大学
1.県民人口の推移
今は1%超時代
ちなみに記録では
大正7年(1918年)~昭和元年(1926年)
昭和21年(1946年)~昭和23年(1948年)
昭和49年(1974年)~昭和56年(1981年)
そして推計では2020年を過ぎてから40年ごろまでが1%時代
明治21年(1888年)から2045年までとして
変化は地域ほど激しくなるので振り回される構図になります.
未来においても推計したがご覧のとおり
国としての考えと地域との状況にズレが起こるのは必然(向き合う対象のふるまいが異なるから)
これから奈良県は人口減少していきます.
2045年の時点で市町村の状況をみると
奈良県全体の人口減少率よりも低いところが 4
奈良県全体とほぼ同じ推移のとなるのが 12
奈良県よりも減少率が高いところが 23
先程と同様に,県としての考えとそれぞれの市区町村の状況にズレが起こるのは必然.
そのようなことにならないように考えていく仕組みづくりが必要になってきます.
無論各市町村でも地区によって状況はますます異なる.
生活者として社会とどのように折り合いをつけていくか
そして,次世代につなげていく持続可能な社会について考えていくことの出来る環境構築が求められています.
その社会システムの一つが医療,日常生活に溶け込む流れが加速している.
(地域と医療の統合に資する 情報活用の考え方 −不足の観点からみる医療2.10− より)
2.医療機関に勤務する医師数
国から都道府県別の医師偏在指標が暫定版として公表されました.医療従事者の需給に関する検討会
— m3.com編集部 (@m3com_editors) 2019年2月19日
医師最多は東京都、最少は岩手県、2倍の格差
厚労省、三次医療圏別、二次医療圏別の「医師偏在指標」公表https://t.co/dkyGYLabLq#エムスリー #医療ニュース #医師偏在指標 #医師需給分科会 pic.twitter.com/NZvhKpYXaQ
これは今までの単純な人口割の医師数を指標として「公平」なのか否なのかを議論のベースにしていましたが,様々な要素を含ませたもので進めていこうというもの.
指標の振る舞いが分かりやすい方が議論には良いと思うので,今回はこの指標ではなく単純に人口割した話で進めます.
コチラは病院勤務の医師数の推移.
それぞれ大きな変化が無いように見えます.しかしながら状況の変化などを加味することで,変化が見えます.
統計の欠点ですが,単純に集約していくことでバラつきは打ち消します.
困るのは偶然の誤差だけではなく意味のある状況を示すデータもかき消されることもあります.
先程の議論に立ち返りますが,その意味ある状況が地域共通のものであれば比較できますが実際には,事情が異なります.
実際にこれをご覧になられた方は,自地域の問題について表現されていないじゃないかと思われているのではないでしょうか
.
なお,平成29年(2017年)の病院勤務の医師数が落ち込んでいますが,これは調査が変更されたことによるものです.
比較する際には同じような調査であったとしてもこのような事が起こるので注意して資料を作成するようにしてください.
参考までに,別の講演での関連スライドです.
(データ連係がもたらす地域の可視化−不足の観点からみる医療2.30− より)
過去から現在までどのような状況だったのか県全体の視点で振り返ります
しかしながら医師が診療を実施するには物的資源である施設の問題も出てきます.
それでは医療施設の状況を確認してみましょう.
診療所は全国よりも多く年々差が開いている状況です.
病院に関しては全国的に減少傾向ですが,奈良県にあっては上昇に転じて差が縮まっている状況です.
これは先程示した県民数の推移が国全体のそれとの変化の度合いの違いによるものです.
ここまでを纏めると
・病院診療所ともに医師数は全国平均に近しい
・病院の数は少なく診療所は多い
・病院の病床数は全国レベルまで上昇したが診療所は少ない
とデータから読み取れます.
住民の受療状況
奈良県が近年病院の受療率がそれまで低かったものが上昇傾向にあるものの,診療所への入院が比較的少ない地域といえます.
逆に外来の受診に関しては病院に偏っている印象があります.これは入院の受療率と関連があるのかもしれませんが,もう少し深掘りしないとわからないところです.
本日はe-statで公開されているデータを中心に奈良県の現状をとりまとめました.
4.おわりに
これは各市町村から自動車で最寄の三次救急医療機関までどの程度時間がかかるのかまとめたものです.
これは昔の某携帯電話会社さんのエリア状況を算出するのと同じく市町村役場を基準として算出しています.
この数値をどのように解釈するのかですが,例えば統計的にみて全国平均を超えているのであれば安心する人がおられるかもしれません.
しかしながらその方はその地域に根差していないように思います.
統計の分野に関わっていますと将来推計の話が良く出てきます.
また,行政を含め地域の未来(次世代)に託すための意思決定に関して研究されている方とお話しする機会があるのですが,概ね私と同じような感覚を持っているように思います.
未来は過去の延長線上にあれば良いわけでもないことを特に学生は理解しなければならない
— めどぶぶ (@medbb) 2011年10月27日
補足・後書
今回は奈良県の過去・現在・未来の医療に関わる話を公開されているデータから取りまとめました. 公に出来ないデータも取り扱っているので,奥歯にものが詰まりそうでしたが,概略をお伝え出来たのではないかと思います 医師数の話は最近話題となっていることもあったこともあり,その話と受療状況を比較する格好にした次第です. 図表類を作成するにあたり用いたデータの出典元はそれぞれのスライドに明記しています.以下のとおりです. 「日本の長期統計系列」 (総務省統計局) (https://www.stat.go.jp/data/chouki/index.html) 「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)(http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson18/t-page.asp) 「医療施設調査」 (厚生労働省) (https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/79-1.html) 「病院報告」 (厚生労働省) (https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/80-1.html) 「患者調査」 (厚生労働省) (https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html) 今回の内容は,データ分析そのものの話から地域医療の連携の話までそれぞれの方が様々な関心を持たれていたことと思います.以下の資料ご参考になれば幸いです.
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